ウェットからドライへと変わっていく、難しい環境下でのレース。
ライダー同士のバトルよりも、如何にタイヤを持たせるか、消耗して滑り出したタイヤで、如何に走り切るか?というレース展開となった。
シビアな状況の中、ミシュランとブリヂストンの差が如実に表れたレースでもある。
ケーシー・ストーナーはこの難しいコンディションに見事に対応し、自身が一流のライダーであることを証明した。
目次
ブリティッシュGP レース前のTips
開 催 日 : 2007年6月27日
コンディション : ウェット
気 温 : 14℃
路 面 温 度 : 18℃
2006年のブリティッシュGP
2006年のブリティッシュGPはペドロサの一人舞台だった。
ポールポジションからスタートしたペドロサは、一旦は3位に落ちるも中盤の12周目にはトップに立ち、2位との差を広げながら独走して優勝している。
予選で手を骨折したロッシが、13番グリッドから徐々に順位を上げ、2週間前に負った鎖骨骨折が治っていないメランドリと2位を争うという、他のライダーが霞んで見えるレース。
1位 ペドロサ、 2位 ロッシ、 3位 メランドリ
ヘイデンが驚異の走り込み
前年のチャンピオンながら今期絶不調で、ゼッケン1が泣いているヘイデンだが、この状況を打開すべく、前戦カタルニアGPの後に行われた2日間のテストで、200周・およそ1000kmの走り込みを行っている。
200周と言えば、通常のレース8回分以上だ。この走行数は尋常ではない。
ヘイデンの「勝ちたい」という意思と、状況を打破できない焦りが窺える。
その結果は出るのか?
Team Robertsのライダーがクリス・ロバーツに
ケニー・ロバーツJr.の引退により、Team RobertsのライダーがケニーロバーツJr.から弟のクリス・ロバーツに変更された。
オリビエ・ジャックが引退
オリビエ・ジャックは前戦カタルニアGPのプラクティス中に負傷し、決勝レースを欠場している。
度重なる転倒負傷の結果、MotoGPを引退することを発表し、本GPから後任のアンソニー・ウエストが参戦している。
ドニントンパークサーキットの概要
コース幅 : 10m
コーナー数 : 右7 左4
最長ストレート : 564m
決勝レース周回数 : 30周
総走行距離 : 120.69km
ブリティッシュGP 決勝のグリッド
Row | Grid | Rider | Team | Time |
1 | 1 | Colin EDWARDS | Fiat Yamaha Team | 1'28.531 |
2 | Valentino ROSSI | Fiat Yamaha Team | 1'28.677 | |
3 | Dani PEDROSA | Repsol Honda Team | 1'28.863 | |
2 | 4 | Nicky HAYDEN | Repsol Honda Team | 1'29.025 |
5 | Casey STONER | Ducati Marlboro Team | 1'29.061 | |
6 | John HOPKINS | Rizla Suzuki MotoGP | 1'29.073 | |
3 | 7 | Carlos CHECA | Honda LCR | 1'29.281 |
8 | Randy DE PUNIET | Kawasaki Racing Team | 1'29.415 | |
9 | Marco MELANDRI | Honda Gresini | 1'29.498 | |
4 | 10 | Toni ELIAS | Honda Gresini | 1'29.711 |
11 | 中野 真矢 | Konica Minolta Honda | 1'29.718 | |
12 | Chris VERMEULEN | Rizla Suzuki MotoGP | 1'29.793 | |
5 | 13 | Loris CAPIROSSI | Ducati Marlboro Team | 1'29.900 |
14 | Alex HOFMANN | Pramac d'Antin | 1'29.911 | |
15 | Alex BARROS | Pramac d'Antin | 1'30.071 | |
6 | 16 | Sylvain GUINTOLI | Dunlop Yamaha Tech 3 | 1'30.271 |
17 | Anthony WEST | Kawasaki Racing Team | 1'30.718 | |
18 | 玉田 誠 | Dunlop Yamaha Tech 3 | 1'30.800 | |
7 | 19 | Kurtis ROBERTS | Team Roberts | 1'31.543 |
ブリティッシュGP レースの経過
ホールショットはコーリン・エドワーズ。これにペドロサ、ヘイデン、ロッシ、ホプキンス、バーミューレンと続く。バーミューレンは12番グリッドから一気に6位に上がっている。5番グリッドスタートのストーナーは、珍しくスタートに失敗し、12位まで落ちる。
ロッシはすかさずヘイデンをパスし3位に。ペドロサはエドワーズをパスしてトップに立つ。ストーナーは早くも7位まで順位を上げている。
全体的にかなりのスローペース。
2周目
クリス・バーミューレンがヘイデン、ロッシをパスし3位に上がる。
ヘイデンがロッシを攻めている。
3周目
ヘイデンとホプキンスがロッシをパスし4位と5位に上がる。
4周目
ホプキンスがヘイデンをパスし3位に上がる。
ストーナーとウエストが6位のロッシをパスする。
引退したオリビエ・ジャックの後任としてカワサキから出場しているウエストは、これがMoto GPデビュー戦ながら、素晴らしい走り。
しかも17番グリッドスタートからの7位走行で、ロッシを抜いている。
さぞ走っていて気持ち良いだろう。
ストーナーはヘイデンもパスし5位に上がってくる。
ロッシは2周の間に4位から8位に落ちている。
5周目
エドワーズがペドロサをパスし、トップに立つ。
ストーナーがホプキンスとバーミューレンパスし3位に。
先頭集団8台のペース上がってくる。この時点でロッシは8位を走っている
ヘイデンが転倒するも、レースに復帰。
首位のペドロサのタイムが伸びず、1周の間に5位まで落ちる。
6周目
トップのエドワーズがストーナーを引き離しにかかる。
ペドロサはロッシとウエストにもパスされ、7位まで落ちる。
転倒から復帰したヘイデンが周回遅れとなる。
7周目
ストーナーがエドワーズに迫ってくる。
ヘイデンがピットインするも、レースには復帰。
8周目
ウエストがバーミューレンをパスし4位に上がるが、その後コースアウト。転倒するも、直ぐにレースに復帰する。
9周目
9周目終了時点でトップのエドワーズと2位のストーナーの差が0.7秒、ストーナーと3位のホプキンスの差は3.2秒。ホプキンスとロッシの差が1.1秒。
ロッシは最速ラップで走行している。
11周目
ロッシがホプキンスをパスし、3位に上がる。
ホプキンスは、早いのだがペースを持続できないのが残念。
この時点でのロッシとストーナーの差は4.8秒。
ロッシがコーナーで止まり切れず、芝生に乗り上げてしまうものの、転倒は免れる。
この間にホプキンスに抜かれてしまい、再度4位となる。
12周目
エドワーズが最速ラップを記録。念願の初勝利なるか?
ロッシが前の周にコースオフした同じ場所でホプキンスをパスする。
14周目
コースが部分的にドライになってきているため、ピットが慌ただしくなる。
残り16周と微妙な状態だが、乗り換えはあるのだろうか?
ペドロサがカピロッシとバロスにパスされ9位に落ちる。
このペースダウンがタイヤのせいなら、乗り換えた方が良いかもしれない。
転倒で一時は15位に落ちたウェストが12位まで上がっている。
15周目
15周目に入ったところでエドワーズはストーナーに1.1秒の差をつけている。3位ロッシはエドワーズから8.6秒遅れ。
16周目
エドワーズとストーナーの差が、0.7秒に縮まる。
ストーナーはさらにエドワーズとの差を詰め、トップに立つ。
18周目
スーナーとエドワーズの1周のラップが1秒違う。ミシュランに問題か?
しかしタイヤ交換するには、残り周回数が少ないのでは?
難しい判断になりそうである。
走行ラインは、ほぼドライとなっている。
さてどうする?
19周目
タイヤ交換するライダーはいない。
20周目
ストーナーは2位のエドワーズに2.5秒の差をつけている。
ラインがドライになったことで、パッシングが目立ち始める。
ペドロサとバロスが9位を、カピロッシとドプニエ11位を争い、何度も順位を入れ替えている。
21周目
ストーナーは1周に1秒のペースでエドワーズとの差を開いている。
22周目
ストーナーが最速ラップを記録
23周目
6位のカピロッシが最速ラップを記録する。カピロッシはホプキンスをパスし5位に上がる。
24周目
ストーナーは2位のエドワーズに8秒差をつけている。
小雨が降り始める。
雨に強いバーミューレンが、3位のロッシに近づいている。
5位を走行していたカピロッシがコーナーで転倒、リタイヤ。
25周目
小雨はラインをウェットにするほどではなく、ウェットタイヤの消耗が進んでいるが、既にドライタイヤに変えるタイミングは過ぎているため、どのようにタイヤを温存するかという我慢の展開になっている。
27周目
バーミューレンがロッシをパスし3位に上がる。タイヤが摩耗しているロッシは、バーミューレンを追うことが出来ない。
28周目
各車、我慢の走りで既に順位決定の感がある。
最終周
大きな展開なく、フィニッシュ。
ブリティッシュGPの結果
ウェットからドライに変わっていく中で、ミシュランの方が摩耗が早かったように感じる。
順位 | Rider | トップとのタイム差 | タイヤメーカー |
1 | Casey STONER | ー | ブリヂストン |
2 | Colin EDWARDS | 11.768 | ミシュラン |
3 | Chris VERMEULEN | 15.678 | ブリヂストン |
4 | Valentino ROSSI | 21.827 | ミシュラン |
5 | John HOPKINS | 35.518 | ブリヂストン |
6 | Randy DE PUNIET | 36.474 | ブリヂストン |
7 | Alex BARROS | 38.094 | ブリヂストン |
8 | Dani PEDROSA | 38.992 | ミシュラン |
9 | Alex HOFMANN | 39.239 | ブリヂストン |
10 | Marco MELANDRI | 1'01.526 | ブリヂストン |
11 | Anthony WEST | 1'06.486 | ブリヂストン |
12 | Toni ELIAS | 1'34.074 | ブリヂストン |
13 | Kurtis ROBERTS | 1 lap | ミシュラン |
14 | 中野 真矢 | 1 lap | ミシュラン |
15 | 玉田 誠 | 2 laps | ダンロップ |
16 | Sylvain GUINTOLI | 2 laps | ダンロップ |
17 | Nicky HAYDEN | 4 laps | ミシュラン |
R | Loris CAPIROSSI、Carlos CHECA |
ブリティッシュGP後の年間ランキング
ストーナーがロッシとの差を更に12ポイント開き、26ポイントとした。
メランドリが4位から6位に一気に落ちている。
ライダーランキング
順位 | ライダー | チーム | ポイント |
1 | STONER Casey | Ducati Marlboro Team | 165 |
2 | ROSSI Valentino | Fiat Yamaha Team | 139 |
3 | PEDROSA Dani | Repsol Honda Team | 106 |
4 | VERMEULEN Chris | Rizla Suzuki MotoGP | 88 |
5 | HOPKINS John | Rizla Suzuki MotoGP | 83 |
6 | MELANDRI Marco | Honda Gresini | 81 |
7 | EDWARDS Colin | Fiat Yamaha Team | 65 |
8 | BARROS Alex | Pramac d'Antin | 60 |
9 | CAPIROSSI Loris | Ducati Marlboro Team | 57 |
10 | ELIAS Toni | Honda Gresini | 45 |
11 | HOFMANN Alex | Pramac d'Antin | 45 |
12 | HAYDEN Nicky | Repsol Honda Team | 41 |
13 | DE PUNIET Randy | Kawasaki Racing Team | 40 |
14 | 中野 真矢 | Konica Minolta Honda | 21 |
15 | CHECA Carlos | Honda LCR | 20 |
16 | 玉田 誠 | Dunlop Yamaha Tech 3 | 17 |
17 | GUINTOLI Sylvain | Dunlop Yamaha Tech 3 | 16 |
18 | WEST Anthony | Kawasaki Racing Team | 5 |
19 | NIETO Fonsi | Kawasaki Racing Team | 5 |
20 | JACQUE Olivier | Kawasaki Racing Team | 4 |
21 | ROBERTS JR Kenny | Team Roberts | 4 |
22 | ROBERTS Kurtis | Team Roberts | 3 |
コンストラクターランキング
順位 | コンストラクター | ポイント |
1 | DUCATI | 168 |
2 | YAMAHA | 146 |
3 | HONDA | 133 |
4 | SUZUKI | 111 |
5 | KAWASAKI | 49 |
6 | KR212V | 7 |
MotoMaxのたわごと@ブリティッシュGP
ウェットレースは普段と全く違った展開となる。
最も印象的なのは2005年第3戦、上海GPでのオリビエ・ジャックの2位だが、今回のレースもアンソニー・ウエストがデビュー戦とは思えない走りを見せてくれた。
このアンソニー・ウエストというライダー、オーストラリアのダートトラック出身だそうで、雨にめっぽう強く、Rain MasterとかRain Manとは呼ばれていたらしい。
それに加え、「初めて」にもめっぽう強いようで、前年(2006年)には代役参戦したスーパースポーツ世界選手権で、初めて乗ったバイク・初めて走るサーキットで18番グリッドスタートから3位入賞を果たしているらしい。
こういう面白いライダーがいると、レースはめっぽう盛り上がる。