Moto GP 2006年第17戦 バレンシアGP

大波乱の2006年を象徴するようなレース。

2位にさえなれば6年連続の年間優勝が達成できるロッシは、自身の得意コースで優勝を決めるべく、予選から絶好調でポールポジションを獲得。一方のヘイデンは予選5位スタートとなった。

ところがロッシはスタートに失敗。そこから歯車が狂い始める。

目次

バレンシアGP レース前のTips

開催日 : 2006年10月29日
コンディション : ドライ
気温 : 32℃
路面温度 : 43℃

2005年のバレンシアGP

2005年のバレンシア戦は、ロッシがまさかの15番グリッドスタート。既に年間チャンピオンはロッシに確定していたが、2位はメランドリとヘイデンが9ポイント差で競っていた。

決勝はこの2名の一騎打ちとなった。

ロッシは15番グリッドから3位となり、王者の貫禄を見せつけた。

1位 メランドリ 2位 ヘイデン 3位 ロッシ

ロッシの優勝を誰もが信じた

前戦でのヘイデンのリタイヤから、年間首位が逆転し、ロッシが8ポイント差で最終戦を迎えている。

もしヘイデンがこのレースに優勝しても、ロッシは2位にさえ入れば年間優勝が決まる。もしヘイデンが2位ならば、ロッシは5位までに入ればよく、更にヘイデンが3位なら8位までに入れば優勝できる。

これに加え、サマーブレイク以降の5戦での結果を見てみると、ロッシは全戦で表彰台に立っているのに対して、ヘイデンは一度も表彰台に立てていない。ヘイデンが今でもランキング2位に居られるのは、単に前半の貯金を食いつぶしている結果でしかなかった。

このような状況から、誰もがロッシの勝利を確信していた。

トロイ・ベイリスが代役出場

トロイ・ベイリスがセテ・ジベルナウの代役で出場 ベイリスはかつてのカピロッシのチームメイトとしてドカティを走らせていたが、2005年の第9戦を最後にMotoGPでは走っていない。2006年はWSB(ワールド・スーパー・バイク)に移り、年間優勝を果たしている。

Moto GP時代の2004年には、バレンシアGPで3位に入賞しており、このサーキットとは相性が良い。

990cc最後のレース

このレースを最後に、Moto GPに参戦するマシンの最高排気量が、990ccから800ccに引き下げられることとなっている。

 

バレンシアサーキットの概要

コース全長 : 4,005mコミュニタットバレンシアナサーキットのコース図

コース幅 : 12m

コーナー数 : 右5 左9

最長ストレート : 876m

決勝レース周回数 : 30周

総走行距離 : 120.15km

バレンシアGP 決勝のグリッド

ドカティの調子が良く、2番、3番グリッドを獲得している。特にMoto GPマシンに乗るのは1年半ぶりという、トロイ・ベイリスが絶好調で、2番グリッドを獲得。

ヘイデンは、前戦でリタイヤの原因を作ったペドロサと並ぶ6番グリッド。お世辞にも幸先が良いポジションとは言えない。

Row Grid Rider Team Time
1 1 Valentino ROSSI Camel Yamaha Team 1'31.002
2 Troy BAYLISS Ducati Marlboro Team 1'31.210
3 Loris CAPIROSSI Ducati Marlboro Team 1'31.307
2 4 中野 真矢 Kawasaki Racing Team 1'31.341
5 Nicky HAYDEN Repsol Honda Team 1'31.378
6 Dani PEDROSA Repsol Honda Team 1'31.385
3 7 Casey STONER Honda LCR 1'31.470
8 Chris VERMEULEN Rizla Suzuki MotoGP 1'31.606
9 John HOPKINS Rizla Suzuki MotoGP 1'31.663
4 10 Colin EDWARDS Camel Yamaha Team 1'31.711
11 Randy DE PUNIET Kawasaki Racing Team 1'31.892
12 Marco MELANDRI Fortuna Honda 1'32.062
5 13 Toni ELIAS Fortuna Honda 1'32.144
14 Kenny ROBERTS JR Team Roberts 1'32.358
15 玉田 誠 Konica Minolta Honda 1'32.467
6 16 Carlos CHECA Tech 3 Yamaha 1'32.747
17 Alex HOFMANN Pramac d'Antín MotoGP 1'33.289
18 Jose Luis CARDOSO Pramac d'Antín MotoGP 1'33.755
19 James ELLISON Tech 3 Yamaha 1'33.953
20 Garry McCOY Ilmor SRT 1'34.811

 

バレンシアGP レースの経過

ロッシはスタートでクラッチ操作を誤ってしまい、車体がわずかにウイリーしてしまうという痛恨のミスを犯して6位まで落ちる。ホールショットはトロイ・ベイリス。これにチームメイトのカピロッシ、ヘイデンのチームメイトであるペドロサが続く。ヘイデンは5位。ペドロサがすかさずカピロッシをパスし、2位に上がる。ヘイデンもメランドリをパスし、4位に上がった。

2周目

ヘイデンがカピロッシをパスし3位に上がる。

7位走行中のロッシの前には、ストーナー、メランドリ、カピロッシが控えていて、順位を上げるのは容易ではない状況。

3周目

ペドロサがコーナーでイン側を開けることでヘイデンに道を譲り、ヘイデンが2位に上がる。

このシーンにはホッとさせられた

4周目

ヘイデンが2位、ロッシは7位を走行している。この順位でフィニッシュした場合、3ポイント差でヘイデンが優勝となるため、ロッシは順位を上げなければならないが、目の前のストーナーを抜くことが出来ない。

5周目

ヘイデンがトップのトロイ・ベイリスに0.3秒差まで迫る。

7位を走行していたロッシが、低速コーナーでバイクをバンクさせ過ぎたことから、スリップしてしまい単独転倒。直ぐにレースに復帰するが、最下位に落ちてしまう。これにより、ヘイデンは2位でフィニッシュしても12ポイント差で年間優勝が決まる状態となる。

7周目

ヘイデンに対して、ロッシが19位を走行しているとのボードが提示される。この時点でのロッシと先頭の差は25秒に達している。

8周目

カピロッシがヘイデンをパスし、2位に上がる。

9周目

ヘイデンは少しペースを落とし、カピロッシから距離を置いての3位単独走行を開始する。ロッシがノーポイントなら、ヘイデンは9位以内に入ればよいためである。

10周目

ベイリスが、2位のカピロッシに0.7秒の差をつけている。ロッシは18位を走行。

12周目

メランドリ、ペドロサ、ストーナーが4位集団を形成している。ペドロサがメランドリに仕掛けるが、カーブを曲がり切れずに、逆にストーナーに抜かれてしまう。

7位のクリス・バーミューレンと、15位のホセ・ルイス・カルドソが転倒し、ロッシがポイント圏内の14位に繰り上がる。ロッシが年間優勝するためには、あと7つ順位を上げる必要がある。

15周目

ヘイデンがペースアップ。

17周目

ペドロサがストーナーをパスし、5位に上がる。

18周目

ペドロサがメランドリをパスし、4位に上がる。

22周目

依然としてヘイデンは3位、ロッシは14位を走行している。ロッシが優勝するためには、6人以上パスする必要があるが、それには10秒以上の差を縮めなければならない。ロッシは、ヘイデンの不運に頼るしかない状態となる。

2位のカピロッシがトップのベイリスに0.5秒差と迫る。カピロッシにとっても、年間ランキング3位をメランドリと争っており、優勝しなければメランドリの3位が確定してしまうため、なんとしてもトップに立たなければならない。

23周目

ヘイデンはカピロッシを追わない。転倒に巻き込まれる可能性のない、3位の単独走行を維持する走り。

24周目

13位のロッシが12位の玉田との差を1秒縮める。

9位を走行していたストーナーが転倒リタイヤ。

27周目

ヘイデンは堅実に3位維持の走りを続けている。

カピロッシはベイリスに迫っているが、プレッシャーをかけられるほどには接近できない。

29周目

ヘイデンの安定走行が続く。ヘイデンの父、アール・ヘイデンが画面に映し出される。アールはレース経過を見ることすら出来ず、フィンガークロスで無事な終了だけを祈っている。

ヘイデンの家族はいつも感動的なシーンを演出してくれる。

最終周

ベイリスがカピロッシとの差を開き、文句なしの優勝を決める。

ヘイデンも危なげない走りで3位でゴール。

ロッシはヘイデンから29秒遅れた13位でフィニッシュ。僅か5ポイント差で、ヘイデンの年間優勝が確定する。

バレンシアGPの結果

 

順位 Rider トップとのタイム差 タイヤメーカー
1 Troy BAYLISS ブリヂストン
2 Loris CAPIROSSI 1.319 ブリヂストン
3 Nicky HAYDEN 9.230 ミシュラン
4 Dani PEDROSA 12.065 ミシュラン
5 Marco MELANDRI 16.306 ミシュラン
6 Toni ELIAS 17.390 ミシュラン
7 中野 真矢 19.329 ブリヂストン
8 Kenny ROBERTS JR 23.174 ミシュラン
9 Colin EDWARDS 26.072 ミシュラン
10 Carlos CHECA 28.194 ダンロップ
11 John HOPKINS 29.364 ブリヂストン
12 玉田 誠 29.707 ミシュラン
13 Valentino ROSSI 38.546 ミシュラン
14 James ELLISON 1'20.013 ダンロップ
15 Garry McCOY 7 laps ミシュラン
R Casey STONER、Chris VERMEULEN、Jose Luis CARDOSO、

Alex HOFMANN、Randy DE PUNIET

ヘイデンはいつも飾りが無いナイスガイだ

Moto Maxのたわごと

ヘイデンのウィニングランに真っ先に握手を求めたのは、ペドロサだった。前戦でのこともあり、ペドロサも相当安堵したのだろう。その後、ロッシもヘイデンに手を差し伸べ、硬い握手を交わした。ロッシのスポーツマンシップにあふれた対応に心が打たれる。

今回のヘイデンは、ラグナセカでの初優勝の際の雄たけびを上げながらのウィニングランとは一変し、「肩の荷が下りた」という雰囲気がにじみ出ていた。そしてついにはバイクを降り、コース上で泣き崩れてしまう。シーズン中にどれだけ多くのプレッシャーに耐えてきたのかが窺えるシーンだ。ヘイデンの振る舞いは、いつも爽やかで飾りが無い。

今更ながら、ヘイデンの死と、存命中に注目していなかった自分が悔やまれる。

 

ヘイデンの年間優勝決定で影が霞んでしまったが、優勝したトロイ・ベイリスは、WSB(ワールド・スーパー・バイク)出身者の初優勝という偉業を達成している。

 

 

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