2008年の開幕戦から、いよいよロレンソがMoto GPに加入する。
気の強いMoto GPライダーの中でも、その人を刺すような視線と強気な言動で異彩を放つロレンソが、どのように立ち回っていくのかが楽しみだ。
まるでギャングのような雰囲気のロレンソとは対極に立つ温厚な技巧派、ドビチオーゾもこの年からMoto GPに加入した。
Moto GP初のナイトレースとなったカタールGPは、この2人が初戦から期待以上の走りで、ストーナーvsロレンソ、ロッシvsドビチオーゾという、ドラマにでもなりそうなバトルを繰り広げてくれた。
目次
カタールGP レース前のTips
開催日 : 2008年3月9日
コンディション : ドライ
気温 : 18℃
路面温度 : 19℃
前年と開催日が1日しか違わないが、ナイトレースとなったことで、気温が11度、路面温度は26度も低くなっている。
2007年のカタールGP
排気量が最大990ccから800ccに引き下げられた初戦で、ドカティが驚きのポテンシャルを発揮している。ドカティを駆るケーシー・ストーナーが見せた直線での圧倒的な速さは、見る者全ての度肝を抜き、他社の800ccマシン開発の方向性を決定づけてしまった。
とてもセンセーショナルな一戦。
- 1位 ケーシー・ストーナー
- 2位 バレンティーノ・ロッシ
- 3位 ダニ・ペドロサ
ロレンソがデビュー戦でPP取得
このグランプリがMoto GPデビューとなるロレンソが、昨年ロッシが記録したのポールポジションレコードを1秒以上更新してポールポジションを獲得している。
ホンダがまたも開発に苦しんでいる
ホンダが2007年に続き、新型マシンの開発に苦しんでいる。加速は良いが、ブレーキングの安定性に問題があるようで、ニッキーヘイデンは開幕戦を昨年のマシンで走っている。
ペドロサも同じ問題を指摘し、07年型を急遽日本から取り寄せて用意していたものの、結局は08年型で出場している。
ヤマハがニューマチックバルブ採用
エンジンのバルブを閉じる動きを、スプリングではなく気圧で制御するという新技術がニューマチックバルブシステム。
2006年にはスズキが実戦投入し、カワサキも07年から採用しているが、2008年からホンダとヤマハも本格的に採用するようになった。
ヤマハは初戦からファクトリーバイクに採用し、第3戦までにはサテライトへの供給を予定している。
一方のホンダは、全面採用には至っていない。
スズキ、カワサキ、ヤマハは新技術の開発を、F1での実績がある他社に委託しているのに対して、ホンダは全てを自社で手掛けていたことが原因らしい。
因みにドゥカティは、デスモドロミックという全く別の技術を採用している。
ロッシと中野がブリヂストンに ペドロサはお預け
2007年にその性能を一気に上げたブリヂストン。 ロッシもその差を無視できなくなり、2007年のラグナセカ終了後に「BSじゃないと続けない」とヤマハに伝えたらしい。
その後に行われた日本GPの後、ヤマハのスタッフがブリヂストンにロッシの意向を申し入れ、2008年からの採用が決まったのだが、ミシュランからの切り替えはロッシのみで、新規加入のチームメイトであるロレンソはミシュランを使用している。
ミシュランとしてもブリヂストンとしても、手の内を知られたくないので、FIAT Yamahaのガレージには、衝立が設けられ、ロッシスペースとロレンソスペースが区分けされる事となったそうな。
Repsol Hondaのペドロサもブリヂストンの採用を希望したが、ホンダに却下されたため、ミシュランでシーズをスタートしているが、この年の第13戦にはブリヂストンに変更されている。
ペドロサはシーズン前のテストが出来ていない
ペドロサは前年末のテスト初日に右手を骨折してしまい、オフシーズンのテストができてなく、カタールの1週前のテストでは最下位だった。
それに加えてカタールのフリー走行でもロッシとのクラッシュがあり、お世辞にも万全とはいえない状況だった。
ホプキンスも大ケガ
スズキからカワサキに移籍したホプキンス。2007年後半に上位に食い込んできたので、勿体無い移籍だと思ったのだけれど、どうやら2007年シーズンの前半にはカワサキと合意していたらしい。
そのカワサキ車でのテスト時に転倒し、外転筋(股関節を外側に曲げる、足を開くための筋肉)を負傷してしまっている。
ある程度のリハビリは行えていたものの、バイクから降りるのも一苦労という状態であったらしい。
サーキットの概要
コース幅 : 12m
コーナー数 : 右10 左6
最長ストレート : 1,068m
決勝レース周回数 : 22周
総走行距離 : 118.36km
カタールGP 決勝のグリッド
フロントローをヤマハ+ミシュラン車が独占した。
2番グリッドのトーズランドは2002年と2007年にWSBのチャンピオンであり、デービュー戦でいきなり2番グリッドを獲得している。彼と3番グリッドのエドワーズは共にYamahaのサテライトチームであるTech 3の所属であるため、この段階ではニューマチックバルブエンジンを与えられていない。
Row | Grid | Rider | Team | Time |
1 | 1 | Jorge LORENZO | Fiat Yamaha Team | 1'53.927 |
2 | James TOSELAND | Tech 3 Yamaha | 1'54.182 | |
3 | Colin EDWARDS | Tech 3 Yamaha | 1'54.499 | |
2 | 4 | Casey STONER | Ducati Marlboro Team | 1'54.733 |
5 | Randy DE PUNIET | LCR Honda MotoGP | 1'54.818 | |
6 | Nicky HAYDEN | Repsol Honda Team | 1'54.880 | |
3 | 7 | Valentino ROSSI | Fiat Yamaha Team | 1'55.133 |
8 | Dani PEDROSA | Repsol Honda Team | 1'55.170 | |
9 | Andrea DOVIZIOSO | JiR Team Scot MotoGP | 1'55.185 | |
4 | 10 | John HOPKINS | Kawasaki Racing Team | 1'55.263 |
11 | Chris VERMEULEN | Rizla Suzuki MotoGP | 1'55.540 | |
12 | Alex DE ANGELIS | San Carlo Honda Gresini | 1'55.692 | |
5 | 13 | Loris CAPIROSSI | Rizla Suzuki MotoGP | 1'56.070 |
14 | Toni ELIAS | Alice Team | 1'56.251 | |
15 | 中野 真矢 | San Carlo Honda Gresini | 1'56.434 | |
6 | 16 | Marco MELANDRI | Ducati Marlboro Team | 1'56.730 |
17 | Sylvain GUINTOLI | Alice Team | 1'57.198 | |
18 | Anthony WEST | Kawasaki Racing Team | 1'57.445 |
カタールGP レースの経過
ホールショットは8番グリッドスタートのペドロサ。エドワーズ、トーズランド、ロレンソ、ストーナーと続く。
ロッシが、ストーナーをパスして5位に上がる。
2周目
ホームストレートの直線でロレンソが、エドワーズ、トーズランドの2台をパスして2位に上がる。
3コーナーでトーズランドがロレンソをパスし2位に戻る。ロッシとストーナーがエドワーズをパスし4位、5位に上がっている。
ロッシがロレンソをパスし、3位に上がる。
3周目
ロッシとロレンソが相次いでドーズランドをパスする。
ファクトリーマシンとサテライトマシンの加速の差が凄い!
ストーナーもトーズランドをパスする。
4周目
1コーナーでストーナーがロレンソをパスするが、直ぐに抜き返される。
9番グリッドスタートのドビチオーゾが、最速ラップを記録し5位に上がってくる。
5周目
ペドロサのリードが縮まってくる。
ロッシがペドロサをパスしトップに立つ。
6周目
この時点での上位タイム差は次の通り。
ロッシ
↓ 0.07秒
ペドロサ
↓ 0.12秒
ロレンソ
↓ 0.2秒
ストーナー
↓ 0.6秒
ドビチオーゾ
ストーナーはペースを上げたい様子だが、ロレンソがコーナーのイン側を閉めていて、パスすることが出来ない。
7周目
上位5台が1つの集団となる。
ロレンソがペドロサをパスして2位に上がる。
ホームストレートにはロッシ、ロレンソ、ペドロサ、ストーナーの順で入るが、ペドロサがロレンソに並ぶ加速を見せる。
ストーナーも一気に加速し2台に並ぶが、1コーナー進入でロレンソが2位をキープ。
ペドロサはストーナーにイン側に入られ、押し出される形で4位に転落する。
8周目
ロレンソとストーナーが争っているが、ストーナーの方が余裕がある。
ストーナーがロレンソをパスして2位に上がる。
凄いテクニック!
9周目
ホームストレートでストーナーがトップに立ち、そのまま先行し始める。
ロレンソがロッシをパスし2位に上がる。
10周目
上位5台の差が開き始めている
ストーナー
↓ 0.19秒
ロレンソ
↓ 0.28秒
ロッシ
↓ 0.34秒
ペドロサ
↓ 0.73秒
ドビチオーゾ
ロレンソだけがストーナーに付いていけている。
11周目
15位を走行していたバーミューレンが、フロントタイヤの交換のためにピットイン。
その後最下位でレースに復帰
12周目
ペドロサがロッシにぴったりと付いている
14周目
ストーナーは2周連続で最速ラップを記録している。
ホームストレートでペドロサがロッシに並ぶがパスは出来ない。ペドロサはロッシより速いのだが抜くことが出来ない。
15周目
ホームストレートでペドロサがロッシをパスする。
ドビチオーゾもロッシに迫っている。
ストーナーがまたも最速ラップ。2位のロレンソに0.9秒の差。
ストーナーはロレンソより0.2秒早い。
ストーナーの後輪は暴れているのに、なんというマシンコントロール力!
18周目
この時点での上位タイム差は次の通り。
ストーナー
↓ 1.8秒
ロレンソ
↓ 5.4秒
ペドロサ
↓ 1.1秒
ロッシ
↓ 0.2秒
ドビチオーゾ
ドビチオーゾがロッシに迫っている。
20周目
ドビチオーゾがロッシをパスして4位に上がるが、直ぐにロッシが挽回。
21周目
ドビチオーゾがロッシを攻めるが、コースをことごとく塞がれ、抜くことが出来ない。
この間にトーズランドも迫ってくる。
22周目
明らかにドビチオーゾの方がロッシよりも速いのだが、ドビチオーゾはロッシにことごとくブロックされ、抜くことが出来ないでいる。
最終周
ドビチオーゾがついに、ロッシをパス。ロッシはすかさず抜き返すがドビチオーゾが挽回し最終コーナーへ突入。ロッシも粘るが、ドビチオーゾが0.2秒差で4位となる。
カタールGPの結果
順位 | Rider | トップとのタイム差 | タイヤメーカー |
1 | Casey STONER | ー | ブリヂストン |
2 | Jorge LORENZO | 5.323 | ミシュラン |
3 | Dani PEDROSA | 10.600 | ミシュラン |
4 | Andrea DOVIZIOSO | 13.288 | ミシュラン |
5 | Valentino ROSSI | 13.305 | ブリヂストン |
6 | James TOSELAND | 14.040 | ミシュラン |
7 | Colin EDWARDS | 15.150 | ミシュラン |
8 | Loris CAPIROSSI | 32.505 | ブリヂストン |
9 | Randy DE PUNIET | 33.003 | ミシュラン |
10 | Nicky HAYDEN | 38.354 | ミシュラン |
11 | Marco MELANDRI | 44.284 | ブリヂストン |
12 | John HOPKINS | 49.857 | ブリヂストン |
13 | 中野 真矢 | 49.871 | ブリヂストン |
14 | Toni ELIAS | 58.532 | ブリヂストン |
15 | Sylvain GUINTOLI | 58.930 | ブリヂストン |
16 | Anthony WEST | 1'05.643 | ブリヂストン |
17 | Chris VERMEULEN | 1 lap | ブリヂストン |
R | Alex DE ANGELIS |
ポイントランキング
ライダーランキング
順位 | ライダー | チーム | ポイント |
1 | Casey STONER | Ducati Marlboro Team | 25 |
2 | Jorge LORENZO | Fiat Yamaha Team | 20 |
3 | Dani PEDROSA | Repsol Honda Team | 16 |
4 | Andrea DOVIZIOSO | JiR Team Scot MotoGP | 13 |
5 | Valentino ROSSI | Fiat Yamaha Team | 11 |
6 | James TOSELAND | Tech 3 Yamaha | 10 |
7 | Colin EDWARDS | Tech 3 Yamaha | 9 |
8 | Loris CAPIROSSI | Rizla Suzuki MotoGP | 8 |
9 | Randy DE PUNIET | LCR Honda MotoGP | 7 |
10 | Nicky HAYDEN | Repsol Honda Team | 6 |
11 | Marco MELANDRI | Ducati Marlboro Team | 5 |
12 | John HOPKINS | Kawasaki Racing Team | 4 |
13 | 中野 真矢 | San Carlo Honda Gresini | 3 |
14 | Toni ELIAS | Alice Team | 2 |
15 | Sylvain GUINTOLI | Alice Team | 1 |
コンストラクターランキング
順位 | コンストラクター | ポイント |
1 | DUCATI | 25 |
2 | YAMAHA | 20 |
3 | HONDA | 16 |
4 | SUZUKI | 8 |
5 | KAWASAKI | 4 |