Moto GP 2007年第14戦 ポルトガルGP

例年名勝負が繰り広げられるポルトガルGPは、2007年も好レースが展開された。

5位以下になると、2年連続の無冠となるロッシ。不振を打開すべく、134周もの走り込みをしたヘイデンが奮闘した決勝は、ロッシ、ヘイデン、ペドロサ、ストーナーが鎬を削る争いとなった。

目次

ポルトガルGP レース前のTips

開 催 日 : 2007年9月2日
コンディション : ドライ
気   温 : 26℃
路 面 温 度 : 42℃

2006年のポルトガルGPは大波乱だった

2006年のポルトガルGPは、第16戦として10月に開催された。

このレースは最初から最後まで大波乱続きだったが、強烈に印象に残ったのは、年間優勝決定のチャンスであったヘイデンに、チームメイトのペドロサが追突し、リタイヤさせてしまったことだろう。

しかし波乱はこれで終わりではなく、11番グリッドからスタートしたトニー・エリアスが、中盤には2位に上がり、ロッシとロバーツJrというGPチャンピオンとトップを争ったあげく、こともあろうに最終コーナーでロッシを抜き去り、0.002秒差で優勝してしまうという、大番狂わせを演じたのだった。

  • 1位 トニー・エリアス
  • 2位 バレンティーノ・ロッシ
  • 3位 ケニー・ロバーツJr.

エストリルは最も遅いサーキット

エストリルサーキットは、Moto GPが開催されたサーキットの中で、平均速度が最も遅いサーキットだった。ライダーにしてみれば、曲がりっぱなしという感覚のサーキットだろう。

エストリルサーキットのレイアウト

レイアウトを見ると良く分かるが、確かにカーブが多い。平均速度が遅いと、ライダーの技量が結果を左右する可能性が高くなる。

そのせいか、エストリルでのレースは内容が濃いことが多い。このサイトでも2005年から3年連続で評価としている。

エストリルでのグランプリは、2012年を最後に現在まで開催されていないが、復活して欲しいサーキットの1つだ。

ロッシはストーナーの年間優勝を止められるか?

前戦が終わった時点で、ストーナーは2位のロッシに85ポイントの差をつけている。ポルトガルGPを含んでも残るは5戦。仮にストーナーが5戦全部リタイヤしても、ロッシは1戦平均で17ポイント取らないといけない。17ポイント以上とは3位以上なのだから簡単ではない。

もう圧倒的にストーナー優位なのだが、去年のヘイデン大逆転の例もあり、最後まで気を抜いてはいけない事はロッシが誰よりもよく知っている。

そのロッシが、このエストリルで6位以下になってしまうと、ストーナーの年間優勝が決まる。

前戦ではエンジントラブルでリタイヤしたロッシだが、このエストリルでは絶対に負けられない。

ヘイデンが今期初のポールポジション

ヘイデンが今期初のポールポジションを獲得した。

このころにはすっかり忘れられてしまっているが、ヘイデンは前年のチャンピオンだ。そのヘイデンが、第14戦にして初のポールポジションなのだから、なんとも無念だ。

ヘイデンのこの状況は決して彼一人の責任ではない。2007年のホンダ機は本当に乗り難かったらしい。中野真矢曰く「頼むから曲がってくれと感じていた」そうだ。そのためペドロサ以外のホンダライダーは皆苦戦している。

この特性は今でも変わっていないようだ。2019年、クラッチロウは「とにかく曲がらない。乗りこなせるのはマルクだけ」と言っていたし、マルク自身も「マシンには曲がり易さよりパワーを求めている」と言っている。

 

そんな中でもヘイデンが状況を変えるべく、前戦翌日のテストで、なんと134周もの走り込みを行っている。134周と言えばレース5回分に近い。全力走行でも5時間に及ぶはずだ。

これは尋常ではない。

その結果としてのポールポジション。

例え今期初だとしても、誇ってよいでしょう。

エストリルサーキットの概要

エストリルサーキットのレイアウトコース全長 : 4,182m

コース幅 : 14m

コーナー数 : 右9 左4

最長ストレート : 986m

決勝レース周回数 : 28周

総走行距離 : 117.096km

ポルトガルGP 決勝のグリッド

ヘイデンが今期初のポールポジション。首位のストーナーが2番、前戦リタイヤのロッシは3番グリッド。

玉田が久しぶりに上位に付けている。

Row Grid Rider Team Time
1 1 Nicky HAYDEN Repsol Honda Team 1'36.301
2 Casey STONER Ducati Marlboro Team 1'36.341
3 Valentino ROSSI Fiat Yamaha Team 1'36.576
2 4 玉田 誠 Dunlop Yamaha Tech 3 1'36.736
5 Dani PEDROSA Repsol Honda Team 1'36.829
6 Colin EDWARDS Fiat Yamaha Team 1'36.904
3 7 Marco MELANDRI Honda Gresini 1'37.157
8 Sylvain GUINTOLI Dunlop Yamaha Tech 3 1'37.189
9 Toni ELIAS Honda Gresini 1'37.246
4 10 John HOPKINS Rizla Suzuki MotoGP 1'37.280
11 Carlos CHECA Honda LCR 1'37.296
12 Chris VERMEULEN Rizla Suzuki MotoGP 1'37.365
5 13 中野 真矢 Konica Minolta Honda 1'37.530
14 Alex BARROS Pramac d'Antin 1'37.550
15 Loris CAPIROSSI Ducati Marlboro Team 1'37.733
6 16 Anthony WEST Kawasaki Racing Team 1'37.885
17 Alex HOFMANN Pramac d'Antin 1'37.959
18 Randy DE PUNIET Kawasaki Racing Team 1'38.271
7 19 Kurtis ROBERTS Team Roberts 1'39.017

 

ロッシ、ダニ、ケーシー、ヘイデン。久しぶりに役者が揃った

ホールショットはストーナー。ヘイデンとペドロサのレプソルホンダが続く。ヘイデンとストーナーはほぼサイドバイサイドで第一コーナーに入る。ヘイデンがストーナーに進路をふさがれる形となり、車体を起こさざるを得なくなる。その隙をついてペドロサがパス。

4位にメランドリ、5位にロッシが付けている ロッシがメランドリをパスし、4位に上がる。

ストーナーは1周目の後半で早くもリードを開き始めている。

 

2周目

ペドロサがストーナーに追いつきつつある。

3位を走行しているヘイデンの後ろに、ロッシ、メランドリ、ホプキンスが迫ってくる。

3周目

ストーナーだけが、コーナー進入時にマシンを一気に倒し込んで直角に曲がるような、他のライダーと違うラインで走行している。

ロッシがヘイデンをパスして3位に上がる。

4周目

メランドリがヘイデンをパスして4位に上がる。

ヘイデンは好調の時のリアをスライドさせる走りが出来ていないように見える。マシンコントロールがきつそうだ。

5周目

ヘイデンがメランドリをパスし4位に戻る。

一時はメランドリを引き離したヘイデンだったが、コーナーで膨らみメランドリに追いつかれてしまう。
メランドリがヘイデンをパスするが、ヘイデンが直ぐに抜き返す。

ヘイデンの強い気持ちが良く表れた走り!

最終コーナーでストーナーのリアが暴れ始めている。

レース後のインタビューでストーナーは「5周目からクラッチに異常が出た。ニュートラルに入ってしまう状態が頻発して、思うように減速できなくなった」と語っていた。

6周目

ペドロサがストーナーに追いつく。

7周目

ペドロサがトップに立つ。ロッシもストーナーに近付いている。

8周目

ペドロサ、ストーナー、ロッシがそれぞれ0.4秒差で走行している。

ヘイデンはメランドリに0.7秒の差をつけて、4位を走行している。

9周目

ロッシがスリップストリームを使い、ストーナーをパスし2位に上がる。

ロッシはすかさずペドロサの追い上げを開始する。

10周目

ロッシがペドロサをパスして首位に立つ。

ロッシがファステストラップを記録。

前戦の鬱憤を晴らすようなロッシの走り!

ストーナーがペドロサに追いついてくる

11周目

ペドロサがエイペックスギリギリのコーナーリングで果敢に攻め、ロッシに近付いている。

12周目

ストーナーが僅かに遅れ始める。

13周目

13周目に入った時点の順位とタイム差は次の通り

ロッシ
↓0.1秒
ペドロサ
↓0.6秒
ストーナー
↓1.5秒
ヘイデン
↓3.3秒
メランドリ

ストーナーがゼブラゾーンぎりぎりまで使った走りで、先頭2人より0.3秒早いラップで周回している。

レース後のインタビューでストーナーは、「後半ペースが上がったのは、クラッチの異常に慣れたから」と語っている。

クラッチの異常って、慣れるものだろうか? 自分には良く分からない、、、

ヘイデンがトップのロッシより0.5秒早い、ファステストラップを記録する。

ストーナーとヘイデンが攻めている

がぜん面白くなってきた。役者が揃った!

16周目

ヘイデンがストーナーとの差を0.9秒まで縮めている。

17周目

ペドロサがロッシのスリップを使い、1コーナーでトップに返り咲く。

ストーナーのペースが僅かに落ちている

18周目

ロッシがペドロサのスリップを使って、追い抜きを試みるが、距離が足りず失敗。

ロッシとストーナーの差が1.3秒まで開いている。

ヘイデンはストーナーから0.6秒遅れ。

19周目

ヘイデンがストーナーとの差を0.2秒まで縮める。

20周目

この時点でのタイム差は

ペドロサ
↓0.1秒
ロッシ
↓1.7秒
ストーナー
↓0.4秒
ヘイデン
↓7.8秒
メランドリ

21周目

ロッシは再度ペドロサのスリップ外リームを使い、追い抜きを図るが、抜くことが出来ない。

ペドロサにプレッシャー作戦は効くのか?

ストーナーがペースアップし、ロッシとの差を0.5秒縮める。

ヘイデンは付いて行くことが出来ない。

22周目

ロッシはペドロサにピッタリと付いていて、敢えて抜こうとしない。

ストーナーはトップの2台より0.6秒早く周回し、一時期2.2秒まで広がったロッシとの差を1.6秒まで戻している。

23周目

ロッシが三度ペドロサに仕掛けるが、抜くことが出来ない。

ストーナーと先頭の差は1.5秒となっている。

残り6周。
ロッシはペドロサを抜けるか?
ストーナーは先頭集団に絡むことが出来るか?

バロスがエンジンブローでリタイヤ。

24周目

ペドロサが第一コーナーでワイドに膨らんでしまい、その隙をついてロッシがトップに立つが、その後ロッシもコーナーではらんでしまい、ペドロサが抜き返す。

このバトルの間にストーナーがロッシと1.1秒差に迫っている。

玉田が転倒リタイヤ。

25周目

ロッシとストーナーの差が0.9秒となる。

26周目

ロッシとストーナーの差が0.8秒となる。

ロッシはペドロの背後にピッタリと付いていて、ペドロサの挙動を確認している。

ロッシはレース後のインタビューで、この時にペドロサのリアタイヤが滑り出したのが見えたと述べている。一方のペドロサは、観察されているのは分かったが、ストーナーやヘイデンが近づいてしまうので、プッシュするしかなかったと語った。

27周目

ホームストレートでロッシがペドロサをパスするが、1コーナーで止まり切れずに僅かにはらんでしまし、その間にペドロサが抜き変えす。24周目と逆の展開だ。

ロッシがギリギリのブレーキングでインからペドロサをパスする。ペドロサはタイヤが消耗しているようで、前半に見せたエイペックギリギリのコーナリングが出来ていない。

ロッシが一気にペースを上げる。

最終周

ペドロサは必死にロッシに付いて行くが、距離が縮まらずそのままフィニッシュ。

ポルトガルGP : 順位一覧

決勝の順位はこのようになった。ロッシはオランダ以来、5戦ぶりの表彰台&優勝である。

順位 Rider トップとのタイム差 タイヤメーカー
1 Valentino ROSSI ミシュラン
2 Dani PEDROSA 0.175 ミシュラン
3 Casey STONER 1.477 ブリヂストン
4 Nicky HAYDEN 12.951 ミシュラン
5 Marco MELANDRI 17.343 ブリヂストン
6 John HOPKINS 18.857 ブリヂストン
7 Carlos CHECA 31.524 ミシュラン
8 Toni ELIAS 40.535 ブリヂストン
9 Loris CAPIROSSI 43.107 ブリヂストン
10 Colin EDWARDS 44.674 ミシュラン
11 中野 真矢 45.403 ミシュラン
12 Anthony WEST 54.562 ブリヂストン
13 Chris VERMEULEN 1'00.002 ブリヂストン
14 Sylvain GUINTOLI 1 lap ダンロップ
R 玉田 誠、Alex BARROS、Randy DE PUNIET、

Alex HOFMANN、Kurtis ROBERTS

ドカティのアレックス・ホフマンのリタイヤ(11周目)は、アクシデントではなく、走行中にイヤになったホフマンが、レースを放棄したらしい。これが原因でホフマンは解雇され、その後Moto GPで走ることは無かった。

ストーナーの優勝は決定か? 残り4戦で76ポイント差

ストーナーとロッシのポイント差が85から76に縮まったものの、残るは4戦!

ロッシはもうストーナーの後ろでゴールすることが出来なくなった。

ライダーランキング

順位 ライダー チーム ポイント
1 Casey STONER Ducati Marlboro Team 287
2 Valentino ROSSI Fiat Yamaha Team 211
3 Dani PEDROSA Repsol Honda Team 188
4 John HOPKINS Rizla Suzuki MotoGP 150
5↓ Chris VERMEULEN Rizla Suzuki MotoGP 147
6 Marco MELANDRI Honda Gresini 137
7 Colin EDWARDS Fiat Yamaha Team 106
8 Loris CAPIROSSI Ducati Marlboro Team 108
9 Nicky HAYDEN Repsol Honda Team 105
10 Alex BARROS Pramac d'Antin 83
11↑ Toni ELIAS Honda Gresini 71
12↓ Alex HOFMANN Pramac d'Antin 65
13 Randy DE PUNIET Kawasaki Racing Team 58
14 Carlos CHECA Honda LCR 54
15 Anthony WEST Kawasaki Racing Team 45
16 中野 真矢 Konica Minolta Honda 42
17 玉田 誠 Dunlop Yamaha Tech 3 33
18 Sylvain GUINTOLI Dunlop Yamaha Tech 3 30
19 Kurtis ROBERTS Team Roberts 10
20 Roger Lee HAYDEN Kawasaki Racing Team 6
21 Michel FABRIZIO Honda Gresini 6
22 Fonsi NIETO Kawasaki Racing Team 5
23 Olivier JACQUE Kawasaki Racing Team 4
24 Kenny ROBERTS JR Team Roberts 4

コンストラクターランキング

 

順位 コンストラクター ポイント
1 DUCATI 299
2 HONDA 239
3 YAMAHA 238
4 SUZUKI 201
5 KAWASAKI 94
6 KR212V 14

     

     

     

     

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