前戦で年間チャンピオンとなったケーシー・ストーナーの凱旋レース。
ストーナーはフィリップアイランドが得意ではないのだが、世界チャンピオンを一目見ようと集まった観客に後押しされ、文句のつけようがない走りで、故郷に錦を飾った。
目次
オーストラリアGP レース前のTips
開 催 日 : 2007年10月14日
コンディション : ドライ
気 温 : 20℃
路 面 温 度 : 31℃
2006年のオーストラリアGPは、天候に翻弄された
2006年のオーストラリアGPは2007年とは違い、日本GPの前の第14戦として、9月中旬に開かれている。ウォームアップ中に、雨が降り始め、ウェットレースが宣言されたものの本降りではなく、全てのライダーがスリックタイヤでスタートするも、間もなく本降りに。
しかし降雨は長く続かず、コースの半分が乾きだし、半分はウェットという状態となってしまった。
レインタイヤ車への乗り換えタイミングと、その後の対応が、レース結果を大きく変えたレース。
- 1位 マルコ・メランドリ
- 2位 クリス・バーミューレン
- 3位 バレンティーノ・ロッシ
ストーナーはフィリップアイランドが苦手
実はストーナーはフィリップアイランドが苦手である。地元サーキットではあるが、表彰台に登ったことは1度しか無い。
過去の戦歴はこうだ。
- 2001年 125cc 12位
- 2002年 250cc 10位
- 2003年 125cc リタイヤ
- 2004年 125cc 3位
- 2005年 250cc リタイヤ
- 2006年 MotoGP 6位
一方でフィリップアイランドを得意としているのがメランドリ。彼はライダーの中で唯一、全クラスでの優勝経験があり、昨年も優勝している。
ロッシもフィリップアイランドが得意で、1998年以降に開かれた9戦の全てで表彰台に立っている。
ノリック死去
ノリックこと阿部典史(あべ のりふみ)がこのレースの1週間前、10月7日に交通事故により他界している。
阿部典史は2004年までMoto GPに参加していたことに加え、彼がMoto GPを去った後も、ロッシが「ろっしふみ(ロッシ+のりふみ)がんばって!」と書かれたステッカーをバイクに貼っている(現在でも貼られている)こともあり、多くのMotoGPファンに知られたライダーだった。
ロッシの2005年機にも貼られていた
この死を悼んで、レース当日朝に黙とうが捧げられている(残念だが、DVDには写っていない)。
タイヤのワンメーク論争
現在のMoto GPでは、出走する全てのバイクがミシュランタイヤを装着している。このタイヤの「ワンメーク化」が検討され始められたのが、この時期である。
実際にワンメークが導入され、全車にブリヂストンタイヤが装着されたのは2009年だが、ブリヂストン車が表彰台を独占しつつあったこの時期に、ミシュランは開発競争に敗れたことを認め始めていたのかもしれない。
フィリップアイランドの概要
コース幅 : 13m
コーナー数 : 右5 左7
最長ストレート : 900m
決勝レース周回数 : 27周
総走行距離 : 120.096km
オーストラリアGP 決勝のグリッド
ミシュラン勢が上位を占めているが、耐久性ではブリヂストンが上と評価されているため、ミシュランがどこまで耐えられるかに注目が集まっていた。
Row | Grid | Rider | Team | Time |
1 | 1 | Dani PEDROSA | Repsol Honda Team | 1'29.201 |
2 | Valentino ROSSI | Fiat Yamaha Team | 1'29.419 | |
3 | Casey STONER | Ducati Marlboro Team | 1'29.816 | |
2 | 4 | Nicky HAYDEN | Repsol Honda Team | 1'29.932 |
5 | Loris CAPIROSSI | Ducati Marlboro Team | 1'30.090 | |
6 | Randy DE PUNIET | Kawasaki Racing Team | 1'30.110 | |
3 | 7 | Alex BARROS | Pramac d'Antin | 1'30.325 |
8 | 中野 真矢 | Konica Minolta Honda | 1'30.612 | |
9 | Sylvain GUINTOLI | Dunlop Yamaha Tech 3 | 1'30.621 | |
4 | 10 | Anthony WEST | Kawasaki Racing Team | 1'30.649 |
11 | Colin EDWARDS | Fiat Yamaha Team | 1'30.676 | |
12 | Marco MELANDRI | Honda Gresini | 1'31.078 | |
5 | 13 | Carlos CHECA | Honda LCR | 1'31.203 |
14 | John HOPKINS | Rizla Suzuki MotoGP | 1'31.386 | |
15 | 玉田 誠 | Dunlop Yamaha Tech 3 | 1'31.595 | |
6 | 16 | Chris VERMEULEN | Rizla Suzuki MotoGP | 1'31.810 |
17 | Chaz DAVIES | Pramac d'Antin | 1'32.043 | |
18 | Toni ELIAS | Honda Gresini | 1'32.442 | |
7 | 19 | Kurtis ROBERTS | Team Roberts | 1'32.948 |
幻と終ったバトル、ヘイデンにまたも不運
ホールショットは、ストーナー。これにヘイデン、ペドロサ、ロッシ、カピロッシと続く。
1周目は激しい展開は無く、キレイに1列で走行している。
ストーナーとヘイデンが速く、2位ヘイデンと3位ペドロサの間に少しギャップが出来ている。
2周目
ロッシがペドロサをパスし、3位に上がるものの、最終コーナーでアウト側のダートを踏んでしまい、ペースダウン。ホームストレートでペドロサに抜き返されてしまう。
3周目
ヘイデンがストーナーにぴったりと付いて走行している。ヘイデンの久々の上位入賞に期待が高まる。
ロッシはペドロサより速いペースで走行できそうな状態だが、ペドロサを抜けずにいる。
4周目
ヘイデンがストーナーにプレッシャーをかけ始める。
タイヤが暖まったのだろうか
ロッシがペドロサをパスする。
ペドロサのマシンがヘアピンカーブでおかしな挙動をし、コースを外した隙に、メランドリに抜かれる。
6周目
ストーナーとヘイデンの間が僅かに開く。ロッシとメランドリの間も少し開いている。
ペドロサがメランドリをパスするが、4周目で挙動異常があったのと同じコーナーで抜き返される。
7周目
1コーナーでペドロサがメランドリをパスし、3位に戻る。
メランドリは三度同じコーナーでのパッシングを試み前に出るが、今回はペドロサがコーナー立ち上がりで挽回する。
8周目
ロッシがファステスト。
この時のタイム差は次の通り
ストーナー
↓ 0.4秒
ヘイデン
↓ 1.3秒
ロッシ
↓ 1.4秒
ペドロサ
↓ 0.7秒
メランドリ
↓ 0.2秒
カピロッシ
10周目
ヘイデンのマシンに問題が見られ、ストーナーとの差が1.5秒に開く。
このころのホンダマシンには、多くの問題があるように見える。
11周目
ロッシがヘイデンをパスし、2位に上がるが、ロッシのリアタイヤもスピンが多くなる。
12周目
ヘイデンのラップタイムが、1秒落ちている。何か問題が発生した様子。
13周目
3位を走っていたヘイデンのバイクから白煙が上がり、ヘイデンは自ら後方に合図し、コースオフ。リタイヤとなる。
その翌年も同じような状態なのだから、モチベーションを保つのは相当に難しかっただろう。
チャンピオン同士の対決は、幻となってしまった。
14周目
この段階での順位とタイム差は次の通り。
ストーナー
↓ 4.0秒
ロッシ
↓ 1.2秒
ペドロサ
↓ 1.0秒
メランドリ
↓ 0.4秒
カピロッシ
16周目
ストーナーはロッシとの差を4.8秒に開き、独走状態。
メランドリがペドロサに追いつく。
17周目
3位のペドロサが2位のロッシに迫り、5位のカピロッシが4位のメランドリに迫る。
この段階での順位とタイム差は次の通り。
ストーナー
↓ 5.1秒
ロッシ
↓ 0.7秒
ペドロサ
↓ 1.1秒
メランドリ
↓ 0.1秒
カピロッシ
18周目
カピロッシがメランドリをパスする。
ペドロサがロッシをパスするも、立ち上がりでペドロサの前輪が激しく降られ、あわや転倒かと思われたが、何とか持ち直す。
19周目
この段階での順位とタイム差は次の通り。
ストーナー
↓ 6.7秒
ペドロサ
↓ 0.3秒
ロッシ
↓ 0.4秒
カピロッシ
↓ 1.2秒
メランドリ
メランドリはタイヤの消耗が激しいようで、この後順位を落としていった。
レース後にカピロッシが「メラントリは前半から攻め過ぎていた」と語っていたので、気負ってしまったのかもしれない。
20周目
カピロッシがホームストレートでロッシをパスし、第二コーナーでペドロサもパスして、一気に2位に上がる。
ロッシがペドロサをパスし3位に上がる。
21周目
ペドロサが遅れ始める。
22周目
ロッシはカピロッシにぴったりと付いて走行している。
23周目
この段階での順位とタイム差は次の通り。
ストーナー
↓ 7.9秒
カピロッシ
↓ 0.1秒
ロッシ
↓ 0.9秒
ペドロサ
↓ 10.2秒
バロス
24周目
ピットからストーナーに減速の指示が出る。
カピロッシがロッシを引き離し始める。
26周目
この段階での順位とタイム差は次の通り。
ストーナー
↓ 6.8秒
カピロッシ
↓ 1.9秒
ロッシ
↓ 1.7秒
ペドロサ
最終周
ストーナーは、全く危なげが無い走りで、9勝目を決める。
これと共に、ドカティのコンストラクターランキング優勝と、Ducati Marlboro Teamのチーム優勝も獲得となった。
オーストラリアGP : 順位一覧
順位 | Rider | トップとのタイム差 | タイヤメーカー |
1 | Casey STONER | ー | ブリヂストン |
2 | Loris CAPIROSSI | 6.763 | ブリヂストン |
3 | Valentino ROSSI | 10.038 | ミシュラン |
4 | Dani PEDROSA | 11.663 | ミシュラン |
5 | Alex BARROS | 19.475 | ブリヂストン |
6 | Randy DE PUNIET | 27.313 | ブリヂストン |
7 | John HOPKINS | 29.243 | ブリヂストン |
8 | Chris VERMEULEN | 34.833 | ブリヂストン |
9 | Colin EDWARDS | 35.073 | ミシュラン |
10 | Marco MELANDRI | 36.971 | ブリヂストン |
11 | Carlos CHECA | 37.721 | ミシュラン |
12 | Anthony WEST | 38.426 | ブリヂストン |
13 | 中野 真矢 | 47.430 | ミシュラン |
14 | Sylvain GUINTOLI | 54.324 | ダンロップ |
15 | Toni ELIAS | 1'10.471 | ブリヂストン |
16 | 玉田 誠 | 1'12.904 | ダンロップ |
17 | Kurtis ROBERTS | 1'13.020 | ミシュラン |
R | Nicky HAYDEN、Chaz DAVIES |
ポイントランキング
ライダーランキング
順位 | ライダー | チーム | ポイント |
1 | Casey STONER | Ducati Marlboro Team | 322 |
2 | Valentino ROSSI | Fiat Yamaha Team | 230 |
3 | Dani PEDROSA | Repsol Honda Team | 201 |
4 | John HOPKINS | Rizla Suzuki MotoGP | 165 |
5 | Chris VERMEULEN | Rizla Suzuki MotoGP | 160 |
6 | Marco MELANDRI | Honda Gresini | 154 |
7 | Loris CAPIROSSI | Ducati Marlboro Team | 150 |
8↑ | Colin EDWARDS | Fiat Yamaha Team | 115 |
9↓ | Nicky HAYDEN | Repsol Honda Team | 112 |
10 | Alex BARROS | Pramac d'Antin | 102 |
11 | Toni ELIAS | Honda Gresini | 88 |
12 | Randy DE PUNIET | Kawasaki Racing Team | 88 |
13 | Alex HOFMANN | Pramac d'Antin | 65 |
14 | Carlos CHECA | Honda LCR | 59 |
15 | Anthony WEST | Kawasaki Racing Team | 58 |
16 | Sylvain GUINTOLI | Dunlop Yamaha Tech 3 | 45 |
17 | 中野 真矢 | Konica Minolta Honda | 45 |
18 | 玉田 誠 | Dunlop Yamaha Tech 3 | 37 |
19 | Kurtis ROBERTS | Team Roberts | 10 |
20 | Roger Lee HAYDEN | Kawasaki Racing Team | 6 |
21 | Michel FABRIZIO | Honda Gresini | 6 |
22 | Fonsi NIETO | Kawasaki Racing Team | 5 |
23 | Olivier JACQUE | Kawasaki Racing Team | 4 |
24 | Kenny ROBERTS JR | Team Roberts | 4 |
25 | 伊藤 真一 | Pramac d'Antin | 1 |
コンストラクターランキング
ドカティの年間勝利が確定している。
順位 | コンストラクター | ポイント |
1 | DUCATI | 349 |
2 | HONDA | 268 |
3 | YAMAHA | 267 |
4 | SUZUKI | 216 |
5 | KAWASAKI | 124 |
6 | KR212V | 14 |