最初から最後まで波乱続きのレース。
年間優勝決定のチャンスもあったニッキー・ヘイデンは、チームメイトであるダニ・ペドロサの追突でその夢を絶たれてしまう。
これで勝利確実と思われたロッシに挑んだのは、誰からも注目されていなかった、トニー・エリアスだった!
目次
ポルトガルGP レース前のTips
開催日 : 2006年10月15日
コンディション : ドライ
気温 : 20℃
路面温度 : 26℃
2005年のポルトガルGP
前年(2005年)のポルトガルGPは、第2戦として開催された。
Moto GPに初めてフラッグ・トゥ・フラッグ(天候変更によるバイク乗り換えの許可)が適用されたレース。
9周目でフラッグ・トゥ・フラッグが宣言されるが、小雨となっていたことから、レインタイヤに変えるライダーは居なかった。
ところが残り5周で再び降雨となったため、各車とも今更ピットインするわけにもいかず、我慢の展開となった。
新ルールと、気まぐれな天候の両方に翻弄されたレース。
1位 アレックス・バロス
2位 バレンティーノ・ロッシ
3位 マックス・ビアッジ
ヘイデンの年間勝利なるか? ロッシが追いつくか?
このレースの見どころは「ヘイデンの年間勝利なるか? ロッシが追いつくか?」の1点のみに絞られていた。
レース前は12ポイント差でヘイデンがリードしている。このリードが26ポイントまで広がれば、次戦の最終戦を待たずにヘイデンの年間優勝が確定する。
例えばヘイデンがこのレースで優勝して25ポイントを獲得し、ロッシが14ポイント以下(4位以下)となれば、ヘイデンの年間優勝が決まる。
逆にロッシが優勝し、ヘイデンが2位であった場合には、両者のポイント差は7ポイントまで縮まり、次戦でロッシが逆転するチャンスが飛躍的に高まるのだ。
ギャリーマッコイがイルモアX3で復帰
2002年を最後にMotoGPから離れていたギャリーマッコイが、2007年からMoto GPに参戦する、イルモア社のマシン“Ilmor X3”で参戦している。
Ilmor X3は、2007年からのレギュレーションに合わせた排気量800ccのマシンであり、他の990cc車に対抗できる状態ではなかったが、2007年シーズンの傾向を占うマシンとして注目を浴びている。
エストリルサーキットの概要
コース幅 : 14m
コーナー数 : 右9 左4
最長ストレート : 986m
決勝レース周回数 : 28周
総走行距離 : 117.096km
2006年に改修されているが、実況解説での指摘は特になく、コンディションの大きな変化はなかったようである。
ポルトガルGP 決勝のグリッド
ポールポジションのロッシの隣には、チームメイトのコーリン・エドワーズがいる。
3番グリッドにはヘイデン。ヘイデンのチームメイトのダニ・ペドロサが、ロッシの後ろの4番グリッド
1~4番グリッドをヤマハとホンダが占め、ヤマハvsホンダという色彩が強い配置となった。
Row | Grid | Rider | Team | Time |
1 | 1 | Valentino ROSSI | Camel Yamaha Team | 1'36.200 |
2 | Colin EDWARDS | Camel Yamaha Team | 1'36.478 | |
3 | Nicky HAYDEN | Repsol Honda Team | 1'36.549 | |
2 | 4 | Dani PEDROSA | Repsol Honda Team | 1'36.569 |
5 | Casey STONER | Honda LCR | 1'36.702 | |
6 | John HOPKINS | Rizla Suzuki MotoGP | 1'36.790 | |
3 | 7 | 中野 真矢 | Kawasaki Racing Team | 1'36.790 |
8 | Sete GIBERNAU | Ducati Marlboro Team | 1'36.940 | |
9 | Carlos CHECA | Tech 3 Yamaha | 1'37.107 | |
4 | 10 | Loris CAPIROSSI | Ducati Marlboro Team | 1'37.182 |
11 | Toni ELIAS | Fortuna Honda | 1'37.245 | |
12 | Chris VERMEULEN | Rizla Suzuki MotoGP | 1'37.371 | |
5 | 13 | Kenny ROBERTS JR | Team Roberts | 1'37.433 |
14 | 玉田 誠 | Konica Minolta Honda | 1'37.517 | |
15 | Marco MELANDRI | Fortuna Honda | 1'37.582 | |
6 | 16 | Randy DE PUNIET | Kawasaki Racing Team | 1'37.592 |
17 | James ELLISON | Tech 3 Yamaha | 1'38.810 | |
18 | Alex HOFMANN | Pramac d'Antín MotoGP | 1'39.647 | |
7 | 19 | Jose Luis CARDOSO | Pramac d'Antín MotoGP | 1'40.451 |
20 | Garry McCOY | Ilmor SRT | 1'41.260 |
ポルトガルGP レースの経過
ホールショットはロッシ。これにコーリン・エドワーズとペドロサが続く。
ペドロサは直ぐにコーリン・エドワーズをパスし2位に上がる。ヘイデンは4位に付けている。
中野が転倒リタイヤ。カピロッシが10番グリッドから一気に6位に上がった。
2周目
ヘイデンがコーリン・エドワーズをパスし3位に上がる。 5位のストーナーが転倒し、7位のジベルナウを巻き込んでしまい、両者リタイヤとなる。これによりトニー・エリアスがヘイデンに続く5位に上がる。
コーリン・エドワーズがヘイデンをパスし、3位に戻る。
3周目
コーリン・エドワーズがペドロサをパスし2位に上がる。
4周目
ヘイデンがペドロサをパスし3位に上がる。ロッシは2位のコーリン・エドワーズに0.8秒の差を付けている。
4位のペドロサはヘイデンをイン側からパスしようとした際に、前輪を滑らせ転倒。この時にヘイデンを巻き込んでしまい、両者リタイヤとなる。
ニッキーはヘルメットを脱ぎ捨て、激怒の形相を見せる。
このアクシデントにより、順位はロッシ、コーリン・エドワーズ、トニー・エリアス、カピロッシ、ケニー・ロバーツの順となる。
6周目
ヘイデンのリタイヤがロッシに伝えられる。
7周目
実況もヘイデン転倒のショックから、沈黙気味であり、レースは淡々と進む。
トニー・エリアスがコーリンに迫る。ロバーツがカピロッシに追いつき、プレッシャーをかけ始める。
8周目
ロバーツがカピロッシをパスし4位に上がる。
11周目
ロッシのチームメイトであるコーリン・エドワーズが、2位を走行して3位以下をブロックし、ロッシをサポートする走りをしている一方で、ヘイデンのチームメイトであるペドロサが、無理なパッシングからヘイデンを転倒させているという現実が、ショックを更に大きなものとしている。実況を通じてヘイデンのメカニックが、ペドロサを非難するコメントが伝えらる。
無理もないよね…
12周目
9位走行中のメランドリがコースアウトし、11位に落ちる。
4位のケニー・ロバーツが3位のトニー・エリアスに迫る。2位のコーリン・エドワーズは2名をブロックする走行を続けている。
コーリンを良く知らない人は、映画「Fastest」を見てみて下さい。家族に囲まれたコーリンの素顔が垣間見れます。
14周目
トニー・エリアスがコーリン・エドワーズをパスし、2位に上がるが、すかさずコーリンが抜き返す。
15周目
トニー・エリアスが再度2位に上がる。
16周目
2位トニー・エリアスがペースアップし、1位ロッシとの差を1.1秒から0.9秒に縮める。コーリン・エドワーズは付いて行けない。
18周目
コーリン・エドワーズとケニー・ロバーツがトニー・エリアスに近付いてくる。エリアスとロッシの差は変わらない。
20周目
エリアスがロッシに近付いてくる。
21周目
エリアスがロッシをパスしトップに立つ。
22周目
エリアスはロッシを0.2秒リードしていたが、コーナーではらんでしまい、ロッシにパスされてしまう。エリアスはロッシに遅れることなく追走する。
23周目
ロバーツがコーリンをパスする。エリアス、ロッシ、ロバーツ、コーリンが団子状態での走行となる。ロバーツがエリアスをパスし、2位に上がる。
24周目
コーリンがエリアスにプレッシャーをかけている。ロバーツもロッシにプレッシャーをかける。
25~26周目
上位は順位変動なく周回する。
27周目
ロバーツがロッシをパスし、トップに立ち、ロッシとの差を広げ始める。(レース後のインタビューで判明したことだが、ロバーツは残り周回数を勘違いしており、この時点でラストラップだと思っていたとのこと)。
最終周
最終周に入った直後の第一カーブで、エリアスが思い切ったブレーキングを見せ、一気にロッシとロバーツの2台を抜き、トップに躍り出る!
ホント凄いよ!
ロッシはすかさずロバ―ツを抜き2位に上がり、エリアスを追走する。
ロッシとエリアスはサイド・バイ・サイドでコーナーを抜ける接戦となるが、最終的にはロッシがエリアスをパスし、そのまま最終コーナーに突入する。
エリアスはロッシにぴったりと付いて離れない。
最終コーナーを抜けた後のストレートで、エリアスはロッシのスリップ・ストリームを巧みに生かし、ゴール直前でロッシに並ぶと、ロッシとほぼ同時にフィニッシュラインを通過する。
写真判定の結果、0.002秒差でトニー・エリアスがMotoGP初優勝を決めた!
ポルトガルGPの結果
順位 | Rider | トップとのタイム差 | タイヤメーカー |
1 | Toni ELIAS | ー | ミシュラン |
2 | Valentino ROSSI | 0.002 | ミシュラン |
3 | Kenny ROBERTS JR | 0.176 | ミシュラン |
4 | Colin EDWARDS | 0.864 | ミシュラン |
5 | 玉田 誠 | 18.419 | ミシュラン |
6 | John HOPKINS | 25.181 | ブリヂストン |
7 | Carlos CHECA | 29.348 | ダンロップ |
8 | Marco MELANDRI | 31.813 | ミシュラン |
9 | Chris VERMEULEN | 40.117 | ブリヂストン |
10 | Randy DE PUNIET | 41.496 | ブリヂストン |
11 | Alex HOFMANN | 41.533 | ダンロップ |
12 | Loris CAPIROSSI | 44.776 | ブリヂストン |
13 | James ELLISON | 1'19.113 | ダンロップ |
14 | Jose Luis CARDOSO | 1'40.716 | ダンロップ |
15 | Garry McCOY | 4 laps | ミシュラン |
R | 中野 真矢、Nicky HAYDEN、Dani PEDROSA、
Casey STONER、Sete GIBERNAU |
この結果により、ロッシは2位のヘイデンに8ポイント差を付け、ランキング首位に立つ。
実況は「もはやヘイデンの優勝は無くなった」と報道した。