Moto GP 2007年第15戦 日本GP

ストーナーが何位であろうと、ロッシより前でゴールすれば、年間優勝が決まるという、いわば一騎討状態での開催となった日本グランプリ。

決勝は雨が降っていないウェットレースとなり、乾いていく路面に対応するライダーの判断力が試された。

難しい状況下で、普段は殆ど判断ミスをしないロッシとストーナーが、細かなミスを重ねていく。

そして誰もが想像しなかった形で、ストーナーの年間優勝が決まることとなった。

目次

日本GP レース前のTips

開 催 日 : 2007年9月23日
コンディション : ウェット
気   温 : 21℃
路 面 温 度 : 24℃

2006年の日本GPはカピロッシの圧勝

2006年の日本GPは、前年の覇者カピロッシが絶好調で、ポールポジションからスタートし、一度もトップを譲らず、2位のロッシに5秒の差をつけて優勝している。

5位を走行していた中野は最終周で転倒リタイヤとなった。

  • 1位 ロリス・カピロッシ
  • 2位 バレンティーノ・ロッシ
  • 3位 マルコ・メランドリ

 

ロッシは何としてもストーナーより前でゴールしたい

ストーナーとロッシのポイント差は76。
モテギ以降のレースは3戦なので、このレースでストーナーがロッシより1ポイントでも多く取れば、点差は77に開く。
レースに優勝すると25ポイント獲得となるため、77ポイント差は、ロッシが3戦優勝し、ストーナーが全戦0ポイントであっても、順位が覆されることは無い。
モテギでストーナーがロッシの前でゴールさえすれば、年間優勝が決まる。

逆にストーナーがロッシの1つ後ろでゴールすると、ポイント差は75になり、優勝決定は持ち越しとなる。

ロッシは何としても、ストーナーの前でゴールしなければならない。

スターティンググリッドはロッシが2番、ストーナーが9番なので、一見ロッシ有利に見えるが、ロッシはモテギが苦手だ。

ロッシは今でもモテギが苦手だ。
転倒率が高く、今まで何度ロッシファンのため息を聞いたことか、、、
自分はロッシファンではないが、モテギではロッシに活躍して欲しいと思う。
ロッシがリタイヤすると、会場の熱気が一気に冷めるんだよね。

雨は止んだがウェットレース

予選はドライだったが、当日は朝から雨。ウォームアップはウェット状態で行われた。

決勝開始の時に雨は上がっていたが、路面はフルウェット。

天候は曇り、気温21度、湿度90パーセント。

もう雨は降らないのか? 路面が乾くとしたら、どれくらいの早さで乾くのか?

不確定な事項が多くあり、殆どのライダーが自信を持ってタイヤを選べない状態だった。

このことが、レース結果を思わぬ方向に持って行った。

日本人ライダーが多数出走

第14戦ポルトガルGPでのレース放棄を原因として解雇されたアレックスホフマンの代わりに、伊藤真一が出場している。
また、秋吉耕佑が昨年同様にスズキから、柳川明がカワサキからワイルドカードで出場している。

ツインリンクもてぎの概要

ツインリンクもてぎのコースレイアウトコース全長 : 4,801m

コース幅 : 15m

コーナー数 : 右8 左6

最長ストレート : 762m

決勝レース周回数 : 24周

総走行距離 : 115.224km

日本GP 決勝のグリッド

予選はドライで行われた。1列目は全員ミシュラン、2列目は全員ブリヂストン車というのも面白い。

Row Grid Rider Team Time
1 1 Dani PEDROSA Repsol Honda Team 1'45.864
2 Valentino ROSSI Fiat Yamaha Team 1'46.255
3 Nicky HAYDEN Repsol Honda Team 1'46.575
2 4 Randy DE PUNIET Kawasaki Racing Team 1'46.643
5 Toni ELIAS Honda Gresini 1'46.804
6 Anthony WEST Kawasaki Racing Team 1'46.912
3 7 Colin EDWARDS Fiat Yamaha Team 1'46.997
8 Loris CAPIROSSI Ducati Marlboro Team 1'47.047
9 Casey STONER Ducati Marlboro Team 1'47.121
4 10 Marco MELANDRI Honda Gresini 1'47.136
11 John HOPKINS Rizla Suzuki MotoGP 1'47.163
12 中野 真矢 Konica Minolta Honda 1'47.295
5 13 秋吉 耕佑 Rizla Suzuki MotoGP 1'47.316
14 Carlos CHECA Honda LCR 1'47.334
15 Alex BARROS Pramac d'Antin 1'47.367
6 16 玉田 誠 Dunlop Yamaha Tech 3 1'47.714
17 Chris VERMEULEN Rizla Suzuki MotoGP 1'47.914
18 Sylvain GUINTOLI Dunlop Yamaha Tech 3 1'48.085
7 19 柳川 明 Kawasaki Racing Team 1'48.569
20 伊藤 真一 Pramac d'Antin 1'49.548
21 Kurtis ROBERTS Team Roberts 1'50.035

 

ロッシとストーナー、焦らないライダーが焦った決勝

スタートでは6番グリッドのウエストが、わずかに動いてしまい、ジャンプスタートが疑われたが、すぐに裁定が下されなかった。
また、17番グリッドのバーミューレンがエンストを起こし、スターターを持ち込んで、エンジンを掛け直してからのスタートとなるなど、スタートから波乱の様相。

ホールショットはペドロサ。エリアスとロッシがこれに続くものの、ロッシは第1コーナーで上手くスピードに乗れてなく、ヘイデンに抜かれて4位に落ちる。
また、9番グリッドのストーナーが得意のスタートダッシュで一気に上がってきており、ロッシを抜き4位に上がった。
ロッシはバイクに乗れていないのが、はた目からも明らかな状態で、第3コーナーを過ぎた時点で7位まで落ちている(この時点で5位を走行中のウエストにジャンプスタート裁定が加われば、実質6位)

ウエストがヘイデン、エリアスと立て続けにパスし、2位に上がる。

秋吉の調子が良く、ロッシ、エドワーズらをパスして5位に上がっている。

ストーナーがヘイデンをパスして3位に上がる(実質2位)

2周目

2周目に入る段階でもペナルティの裁定が出ていないため、ウエストは2位のまま走行する。

メランドリがロッシとエドワーズを抜き、6位に上がってくる。

ロバーツがスリックに換えるためにピットインする。

このピットインは、どう考えても早すぎた。
ロバーツはその後1周してリタイヤしている。

ジャンプスタートの疑いが濃厚なウエストが絶好調で、トップのペドロサに迫っている。

ウエストがペドロサをパスしてトップに上がる。

ペナルティを受ける可能性が高いライダーがトップを走っているため、実際の順位と見かけの順位が違うという、耐久レースのような奇異な状態、、

ストーナーがペドロサをパスして、2位にあがる(実質トップ)

メランドリが秋吉、ペドロサと立て続けにパスし3位に上がる(実質2位)

この時点でロッシは7位(実質6位)

3周目

ウエストにライドスルーペナルティの裁定が下される。

メランドリがストーナーに近付いているが、ストーナーはウエストが邪魔になりペースを上げれない様子。

最下位走行の柳川が、ドライタイヤへの交換のためピットインする。

5位を走行していた秋吉が、ドプニエとロッシにパスされ、7位に落ちる。

3周目終了時に、ウエストがライドスルーペナルティを実施する。

4周目

ウエストがライドスルーを行ったことで、ストーナーが先頭に立つが、メランドリが完全に追いついている。ペドロサは3位、ロッシは4位を走行。

ウエストは14位でレースに復帰した。

ロッシがペドロサをパスして3位に上がる。

メランドリがストーナーをパスしてトップに立つ。

路面が乾いてきており、いつスリックに変えるべきか?の判断が必要な状態となっている。

6周目

思っていたような走行が出来ていないロッシは、早々にスリックに変えるかと思われたが、ピットインせずに走行を続ける。

7周目

依然として、上位集団はピットインせず、レインタイヤで走行している。

この段階での順位とタイム差は次のとおり。

メランドリ
↓ 0.2秒
ストーナー
↓ 4.7秒
ロッシ
↓ 1.9秒
ペドロサ
↓ 0.5秒
秋吉

8周目

依然として上位陣はピットインしない。

この段階での順位とタイム差は次のとおり。

メランドリ
↓ 0.2秒
ストーナー
↓ 4.7秒
ロッシ
↓ 2.5秒
ペドロサ
↓ 1.0秒
秋吉

17位のヘイデン、18位のギュントーリなど、下位ライダーがピットインし、スリック車に乗り換え始める。

10周目

メランドリとストーナーの差が0.6秒まで開き、ストーナーとロッシとの差が3.5秒に縮まっている。

8位走行中のカピロッシがピットインし、スリック車に乗り換える。

カピロッシは試合後にのインタビューで「(早い段階でピットインしたのは)ハードレインタイヤがうまく機能しなかったからだ。」と語っている。

8周目にスリックに換えたギュントーリが、先頭集団より3秒早いタイムを出す。

先頭集団はピットに入るか?
ここで入るどうかで結果は大きく変わるはず!

上位陣はピットに入らずに、レインタイヤでの走行を続行する。

11周目

ストーナーとロッシの差が2.4秒と、1週前より1.1秒縮まっている。

ハーフウェットでは、ミシュランのレインタイヤの方が上手く機能しているように見える。

空が暗くなり、ピットに数粒の雨が落ちてきたとのレポートが入る。

ホプキンスがスリックに交換。

12位のギュントーリは引き続き最速で周回している。

メランドリとストーナーの差が1.5秒、ストーナーとロッシの差が1.2秒となる。

これら3人に加えて、4位ペドロサ、5位エドワーズなどは未だピットに入らない。

12周目

ロッシがストーナーに追いつき、90度コーナーでパスする。

上位陣は引き続き、ピットインせず走行を続ける。

いち早くスリックに乗り換えたカピロッシが最速ラップを記録する。1周タイムが上位陣より7秒早いが、上位陣は相変わらずピットインしない。

これはいけない。
ロッシに抜かれたこのタイミングが、ストーナーにとっての最良のピットインタイミングのはず。
ストーナー、焦ったか?

 

14周目

ペドロサが上位3人に迫ってきている。

ロッシがメランドリをパスして先頭に立つが、直ぐに抜き返される。

ペドロサがストーナーをパスして3位に上がる。

ロッシとペドロサはピットレーンに入らないが、メランドリとストーナーはピットインする。

ストーナーはレース後のインタビューで「ピットインのタイミングが計れなかったが、ピットサインが出て安心してピットに入れた」と語っている。

ロッシにピットイン指示のボードが出される。

14周目

ロッシが後ろを振り返り、ストーナーとメランドリがピットに入ったことを確認する。

この時点でトップのロッシと、5位カピロッシは15秒差だが、カピロッシはロッシよりも6秒早いラップで走行している。

トップのロッシがピットイン。

2位のペドロサは、ピットロードに入ろうとしたところでハイサイドを起こし、リタイヤとなる。

15周目

ロッシがピットにいる間に、カピロッシがトップに立つ。

ロッシは2位でレースに復帰。ストーナーは8位。

16周目

ロッシはストーナーの3秒前を走っているが、ペースが上がらない。

ギュントーリがロッシをパスする。

ロッシは90度コーナーで大きくはらみ、ウエストにもパスされる。

ロッシが再びピットインする。

ピットでロッシは、フロントタイヤにパンクのような挙動が有ると訴えるが、何ら問題は見つからず、すぐに再スタート。

ロッシがピットにいる間にストーナーが5位に上がる。

ロッシは12位でレースに復帰。

解説者によれば、この時ロッシは中国GPで感じたのと同じトラブルを指摘していたらしい。タイヤが冷えた状態でコーナーに入ると、フロントがジグザグに動いてしまうそうだ。

17周目

ロッシはトップから46.0秒遅れの12位で走行している。

18周目

この時点での順位とタイム差は次の通り

カピロッシ
↓ 14.5秒
ドプニエ
↓ 0.2秒
エリアス
↓3.0秒
ギュントーリ
↓5.0秒
ストーナー
↓4.2秒
メランドリ

ロッシはトップから1分3秒遅れの15位まで落ちている。

ロッシが90度コーナーを曲がり切れず、コースオフしてしまう。

ロッシらしからぬ焦りの走りが見える。

20周目

ストーナーにロッシが15位というボードが出される。

3位のエリアスにギュントーリが迫っている。

メランドリがストーナーをパスして5位に上がる。

22周目

ギュントーリがコーナーでエリアスをパスするが、はらんでしまい抜き返される

最終周

エリアスがペースアップするが、ギュントーリは付いて行けず、順位が確定する。

ロッシは13位でフィニッシュ。

 

カピロッシは2位に10秒の大差をつけてモテギ3連覇を決め、ストーナーは年間チャンピオンに輝くという、ドカティとブリヂストンにとって最高の一日となった。

 

日本GP : 順位一覧

決勝の順位はこのようになった。

順位 Rider トップとのタイム差 タイヤメーカー
1 Loris CAPIROSSI ブリヂストン
2 Randy DE PUNIET 10.853 ブリヂストン
3 Toni ELIAS 11.526 ブリヂストン
4 Sylvain GUINTOLI 12.192 ダンロップ
5 Marco MELANDRI 28.569 ブリヂストン
6 Casey STONER 31.179 ブリヂストン
7 Anthony WEST 50.001 ブリヂストン
8 Alex BARROS 52.343 ブリヂストン
9 Nicky HAYDEN 53.629 ミシュラン
10 John HOPKINS 59.715 ブリヂストン
11 Chris VERMEULEN 1'02.804 ブリヂストン
12 玉田 誠 1'09.313 ダンロップ
13 Valentino ROSSI 1'09.699 ミシュラン
14 Colin EDWARDS 1'11.735 ミシュラン
15 伊藤 真一 1'12.290 ブリヂストン
16 中野 真矢 1'32.979 ミシュラン
17 柳川 明 1 lap ブリヂストン
18 Carlos CHECA 1 lap ミシュラン
R 秋吉 耕佑、Dani PEDROSA、Kurtis ROBERTS

ポイントランキング

ストーナーがロッシに83ポイント差をつけ、年間優勝が確定した。

ライダーランキング

順位 ライダー チーム ポイント
1 Casey STONER Ducati Marlboro Team 297
2 Valentino ROSSI Fiat Yamaha Team 214
3 Dani PEDROSA Repsol Honda Team 188
4 John HOPKINS Rizla Suzuki MotoGP 156
5 Chris VERMEULEN Rizla Suzuki MotoGP 152
6 Marco MELANDRI Honda Gresini 148
7 Loris CAPIROSSI Ducati Marlboro Team 130
8 Nicky HAYDEN Repsol Honda Team 112
9 Colin EDWARDS Fiat Yamaha Team 108
10 Alex BARROS Pramac d'Antin 91
11 Toni ELIAS Honda Gresini 87
12 Randy DE PUNIET Kawasaki Racing Team 78
13↓ Alex HOFMANN Pramac d'Antin 65
14 Carlos CHECA Honda LCR 54
15 Anthony WEST Kawasaki Racing Team 54
16 Sylvain GUINTOLI Dunlop Yamaha Tech 3 43
17 中野 真矢 Konica Minolta Honda 42
18↓ 玉田 誠 Dunlop Yamaha Tech 3 37
19 Kurtis ROBERTS Team Roberts 10
20 Roger Lee HAYDEN Kawasaki Racing Team 6
21 Michel FABRIZIO Honda Gresini 6
22 Fonsi NIETO Kawasaki Racing Team 5
23 Olivier JACQUE Kawasaki Racing Team 4
24 Kenny ROBERTS JR Team Roberts 4
25 伊藤 真一 Pramac d'Antin 1

コンストラクターランキング

言うまでも無いが、ドカティ敵なしである

順位 コンストラクター ポイント
1 DUCATI 324
2 HONDA 255
3 YAMAHA 251
4 SUZUKI 207
5 KAWASAKI 114
6 KR212V 14

     

    ブリヂストンの勝利は、ブリヂストンの力不足が原因?

    Moto Maxのたわごと@日本GP

    日本グランプリの上位は、ブリヂストン車ばかりだ。

    ミシュランの最高位はヘイデンの9位。それに加えリタイヤ3人の内、2人がミシュランタイヤだ。

    レース開始前には、ブリヂストンがテストを繰り返しているツインリンクもてぎでウェットコンディションとなれば、ブリヂストン車が圧倒的に有利と感じていた。

    ところがレース序盤で、ミシュランの方が機能していることが、明らかに分かる展開となった。カピロッシがレース後に語ったように、ハーフウェットの状態では、ミシュランの方がうまく機能していたのだ。

     

    ところがこれが、レース結果には、全く逆の作用を持った。

     

    今回のレースは順位変動が激しく、文章で把握しづらいかと思うので、変動をグラフにしてみた。

    1位のカピロッシから6位のストーナーまでと、ロッシの順位変動はこのようになっている。

    2007年MotoGP日本GPの上位順位変動

    これを見ると、いち早くタイヤを変えたギュントーリ(黄色線)が一旦は順位を下げたものの、その後には急激に順位を上げた事が良く分かる。

    カピロッシ(赤線)は順位低下を最低限に抑える、まさにパーフェクトなタイミングでタイヤ交換を行っている。

    一方で、バトルに集中してしまったロッシとストーナーは、お互いに集中するあまり、その他の猛烈な追い上げを許してしまった。

    ミシュラン車はレインタイヤで走れてしまったがために、ロッシのピットインのタイミングが遅れた。

    ブリヂストン車はレインタイヤが機能しなかったために、カピロッシは早目にドライタイヤに交換した。

    この差がレース結果を決めてしまったのだから、レースと言うのは全くもって、何が結果を決めてしまうのか分からないものだ。

     

     

     

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