ストーナーが何位であろうと、ロッシより前でゴールすれば、年間優勝が決まるという、いわば一騎討状態での開催となった日本グランプリ。
決勝は雨が降っていないウェットレースとなり、乾いていく路面に対応するライダーの判断力が試された。
難しい状況下で、普段は殆ど判断ミスをしないロッシとストーナーが、細かなミスを重ねていく。
そして誰もが想像しなかった形で、ストーナーの年間優勝が決まることとなった。
目次
日本GP レース前のTips
開 催 日 : 2007年9月23日
コンディション : ウェット
気 温 : 21℃
路 面 温 度 : 24℃
2006年の日本GPはカピロッシの圧勝
2006年の日本GPは、前年の覇者カピロッシが絶好調で、ポールポジションからスタートし、一度もトップを譲らず、2位のロッシに5秒の差をつけて優勝している。
5位を走行していた中野は最終周で転倒リタイヤとなった。
- 1位 ロリス・カピロッシ
- 2位 バレンティーノ・ロッシ
- 3位 マルコ・メランドリ
ロッシは何としてもストーナーより前でゴールしたい
ストーナーとロッシのポイント差は76。
モテギ以降のレースは3戦なので、このレースでストーナーがロッシより1ポイントでも多く取れば、点差は77に開く。
レースに優勝すると25ポイント獲得となるため、77ポイント差は、ロッシが3戦優勝し、ストーナーが全戦0ポイントであっても、順位が覆されることは無い。
モテギでストーナーがロッシの前でゴールさえすれば、年間優勝が決まる。
逆にストーナーがロッシの1つ後ろでゴールすると、ポイント差は75になり、優勝決定は持ち越しとなる。
ロッシは何としても、ストーナーの前でゴールしなければならない。
スターティンググリッドはロッシが2番、ストーナーが9番なので、一見ロッシ有利に見えるが、ロッシはモテギが苦手だ。
転倒率が高く、今まで何度ロッシファンのため息を聞いたことか、、、
自分はロッシファンではないが、モテギではロッシに活躍して欲しいと思う。
ロッシがリタイヤすると、会場の熱気が一気に冷めるんだよね。
雨は止んだがウェットレース
予選はドライだったが、当日は朝から雨。ウォームアップはウェット状態で行われた。
決勝開始の時に雨は上がっていたが、路面はフルウェット。
天候は曇り、気温21度、湿度90パーセント。
もう雨は降らないのか? 路面が乾くとしたら、どれくらいの早さで乾くのか?
不確定な事項が多くあり、殆どのライダーが自信を持ってタイヤを選べない状態だった。
このことが、レース結果を思わぬ方向に持って行った。
日本人ライダーが多数出走
第14戦ポルトガルGPでのレース放棄を原因として解雇されたアレックスホフマンの代わりに、伊藤真一が出場している。
また、秋吉耕佑が昨年同様にスズキから、柳川明がカワサキからワイルドカードで出場している。
ツインリンクもてぎの概要
コース幅 : 15m
コーナー数 : 右8 左6
最長ストレート : 762m
決勝レース周回数 : 24周
総走行距離 : 115.224km
日本GP 決勝のグリッド
予選はドライで行われた。1列目は全員ミシュラン、2列目は全員ブリヂストン車というのも面白い。
Row | Grid | Rider | Team | Time |
1 | 1 | Dani PEDROSA | Repsol Honda Team | 1'45.864 |
2 | Valentino ROSSI | Fiat Yamaha Team | 1'46.255 | |
3 | Nicky HAYDEN | Repsol Honda Team | 1'46.575 | |
2 | 4 | Randy DE PUNIET | Kawasaki Racing Team | 1'46.643 |
5 | Toni ELIAS | Honda Gresini | 1'46.804 | |
6 | Anthony WEST | Kawasaki Racing Team | 1'46.912 | |
3 | 7 | Colin EDWARDS | Fiat Yamaha Team | 1'46.997 |
8 | Loris CAPIROSSI | Ducati Marlboro Team | 1'47.047 | |
9 | Casey STONER | Ducati Marlboro Team | 1'47.121 | |
4 | 10 | Marco MELANDRI | Honda Gresini | 1'47.136 |
11 | John HOPKINS | Rizla Suzuki MotoGP | 1'47.163 | |
12 | 中野 真矢 | Konica Minolta Honda | 1'47.295 | |
5 | 13 | 秋吉 耕佑 | Rizla Suzuki MotoGP | 1'47.316 |
14 | Carlos CHECA | Honda LCR | 1'47.334 | |
15 | Alex BARROS | Pramac d'Antin | 1'47.367 | |
6 | 16 | 玉田 誠 | Dunlop Yamaha Tech 3 | 1'47.714 |
17 | Chris VERMEULEN | Rizla Suzuki MotoGP | 1'47.914 | |
18 | Sylvain GUINTOLI | Dunlop Yamaha Tech 3 | 1'48.085 | |
7 | 19 | 柳川 明 | Kawasaki Racing Team | 1'48.569 |
20 | 伊藤 真一 | Pramac d'Antin | 1'49.548 | |
21 | Kurtis ROBERTS | Team Roberts | 1'50.035 |
ロッシとストーナー、焦らないライダーが焦った決勝
スタートでは6番グリッドのウエストが、わずかに動いてしまい、ジャンプスタートが疑われたが、すぐに裁定が下されなかった。
また、17番グリッドのバーミューレンがエンストを起こし、スターターを持ち込んで、エンジンを掛け直してからのスタートとなるなど、スタートから波乱の様相。
ホールショットはペドロサ。エリアスとロッシがこれに続くものの、ロッシは第1コーナーで上手くスピードに乗れてなく、ヘイデンに抜かれて4位に落ちる。
また、9番グリッドのストーナーが得意のスタートダッシュで一気に上がってきており、ロッシを抜き4位に上がった。
ロッシはバイクに乗れていないのが、はた目からも明らかな状態で、第3コーナーを過ぎた時点で7位まで落ちている(この時点で5位を走行中のウエストにジャンプスタート裁定が加われば、実質6位)
ウエストがヘイデン、エリアスと立て続けにパスし、2位に上がる。
秋吉の調子が良く、ロッシ、エドワーズらをパスして5位に上がっている。
ストーナーがヘイデンをパスして3位に上がる(実質2位)
2周目
2周目に入る段階でもペナルティの裁定が出ていないため、ウエストは2位のまま走行する。
メランドリがロッシとエドワーズを抜き、6位に上がってくる。
ロバーツがスリックに換えるためにピットインする。
ロバーツはその後1周してリタイヤしている。
ジャンプスタートの疑いが濃厚なウエストが絶好調で、トップのペドロサに迫っている。
ウエストがペドロサをパスしてトップに上がる。
ストーナーがペドロサをパスして、2位にあがる(実質トップ)
メランドリが秋吉、ペドロサと立て続けにパスし3位に上がる(実質2位)
この時点でロッシは7位(実質6位)
3周目
ウエストにライドスルーペナルティの裁定が下される。
メランドリがストーナーに近付いているが、ストーナーはウエストが邪魔になりペースを上げれない様子。
最下位走行の柳川が、ドライタイヤへの交換のためピットインする。
5位を走行していた秋吉が、ドプニエとロッシにパスされ、7位に落ちる。
3周目終了時に、ウエストがライドスルーペナルティを実施する。
4周目
ウエストがライドスルーを行ったことで、ストーナーが先頭に立つが、メランドリが完全に追いついている。ペドロサは3位、ロッシは4位を走行。
ウエストは14位でレースに復帰した。
ロッシがペドロサをパスして3位に上がる。
メランドリがストーナーをパスしてトップに立つ。
路面が乾いてきており、いつスリックに変えるべきか?の判断が必要な状態となっている。
6周目
思っていたような走行が出来ていないロッシは、早々にスリックに変えるかと思われたが、ピットインせずに走行を続ける。
7周目
依然として、上位集団はピットインせず、レインタイヤで走行している。
この段階での順位とタイム差は次のとおり。
メランドリ
↓ 0.2秒
ストーナー
↓ 4.7秒
ロッシ
↓ 1.9秒
ペドロサ
↓ 0.5秒
秋吉
8周目
依然として上位陣はピットインしない。
この段階での順位とタイム差は次のとおり。
メランドリ
↓ 0.2秒
ストーナー
↓ 4.7秒
ロッシ
↓ 2.5秒
ペドロサ
↓ 1.0秒
秋吉
17位のヘイデン、18位のギュントーリなど、下位ライダーがピットインし、スリック車に乗り換え始める。
10周目
メランドリとストーナーの差が0.6秒まで開き、ストーナーとロッシとの差が3.5秒に縮まっている。
8位走行中のカピロッシがピットインし、スリック車に乗り換える。
8周目にスリックに換えたギュントーリが、先頭集団より3秒早いタイムを出す。
ここで入るどうかで結果は大きく変わるはず!
上位陣はピットに入らずに、レインタイヤでの走行を続行する。
11周目
ストーナーとロッシの差が2.4秒と、1週前より1.1秒縮まっている。
空が暗くなり、ピットに数粒の雨が落ちてきたとのレポートが入る。
ホプキンスがスリックに交換。
12位のギュントーリは引き続き最速で周回している。
メランドリとストーナーの差が1.5秒、ストーナーとロッシの差が1.2秒となる。
これら3人に加えて、4位ペドロサ、5位エドワーズなどは未だピットに入らない。
12周目
ロッシがストーナーに追いつき、90度コーナーでパスする。
上位陣は引き続き、ピットインせず走行を続ける。
いち早くスリックに乗り換えたカピロッシが最速ラップを記録する。1周タイムが上位陣より7秒早いが、上位陣は相変わらずピットインしない。
ロッシに抜かれたこのタイミングが、ストーナーにとっての最良のピットインタイミングのはず。
ストーナー、焦ったか?
14周目
ペドロサが上位3人に迫ってきている。
ロッシがメランドリをパスして先頭に立つが、直ぐに抜き返される。
ペドロサがストーナーをパスして3位に上がる。
ロッシとペドロサはピットレーンに入らないが、メランドリとストーナーはピットインする。
ロッシにピットイン指示のボードが出される。
14周目
ロッシが後ろを振り返り、ストーナーとメランドリがピットに入ったことを確認する。
この時点でトップのロッシと、5位カピロッシは15秒差だが、カピロッシはロッシよりも6秒早いラップで走行している。
トップのロッシがピットイン。
2位のペドロサは、ピットロードに入ろうとしたところでハイサイドを起こし、リタイヤとなる。
15周目
ロッシがピットにいる間に、カピロッシがトップに立つ。
ロッシは2位でレースに復帰。ストーナーは8位。
16周目
ロッシはストーナーの3秒前を走っているが、ペースが上がらない。
ギュントーリがロッシをパスする。
ロッシは90度コーナーで大きくはらみ、ウエストにもパスされる。
ロッシが再びピットインする。
ピットでロッシは、フロントタイヤにパンクのような挙動が有ると訴えるが、何ら問題は見つからず、すぐに再スタート。
ロッシがピットにいる間にストーナーが5位に上がる。
ロッシは12位でレースに復帰。
17周目
ロッシはトップから46.0秒遅れの12位で走行している。
18周目
この時点での順位とタイム差は次の通り
カピロッシ
↓ 14.5秒
ドプニエ
↓ 0.2秒
エリアス
↓3.0秒
ギュントーリ
↓5.0秒
ストーナー
↓4.2秒
メランドリ
ロッシはトップから1分3秒遅れの15位まで落ちている。
ロッシが90度コーナーを曲がり切れず、コースオフしてしまう。
20周目
ストーナーにロッシが15位というボードが出される。
3位のエリアスにギュントーリが迫っている。
メランドリがストーナーをパスして5位に上がる。
22周目
ギュントーリがコーナーでエリアスをパスするが、はらんでしまい抜き返される
最終周
エリアスがペースアップするが、ギュントーリは付いて行けず、順位が確定する。
ロッシは13位でフィニッシュ。
カピロッシは2位に10秒の大差をつけてモテギ3連覇を決め、ストーナーは年間チャンピオンに輝くという、ドカティとブリヂストンにとって最高の一日となった。
日本GP : 順位一覧
決勝の順位はこのようになった。
順位 | Rider | トップとのタイム差 | タイヤメーカー |
1 | Loris CAPIROSSI | ー | ブリヂストン |
2 | Randy DE PUNIET | 10.853 | ブリヂストン |
3 | Toni ELIAS | 11.526 | ブリヂストン |
4 | Sylvain GUINTOLI | 12.192 | ダンロップ |
5 | Marco MELANDRI | 28.569 | ブリヂストン |
6 | Casey STONER | 31.179 | ブリヂストン |
7 | Anthony WEST | 50.001 | ブリヂストン |
8 | Alex BARROS | 52.343 | ブリヂストン |
9 | Nicky HAYDEN | 53.629 | ミシュラン |
10 | John HOPKINS | 59.715 | ブリヂストン |
11 | Chris VERMEULEN | 1'02.804 | ブリヂストン |
12 | 玉田 誠 | 1'09.313 | ダンロップ |
13 | Valentino ROSSI | 1'09.699 | ミシュラン |
14 | Colin EDWARDS | 1'11.735 | ミシュラン |
15 | 伊藤 真一 | 1'12.290 | ブリヂストン |
16 | 中野 真矢 | 1'32.979 | ミシュラン |
17 | 柳川 明 | 1 lap | ブリヂストン |
18 | Carlos CHECA | 1 lap | ミシュラン |
R | 秋吉 耕佑、Dani PEDROSA、Kurtis ROBERTS |
ポイントランキング
ストーナーがロッシに83ポイント差をつけ、年間優勝が確定した。
ライダーランキング
順位 | ライダー | チーム | ポイント |
1 | Casey STONER | Ducati Marlboro Team | 297 |
2 | Valentino ROSSI | Fiat Yamaha Team | 214 |
3 | Dani PEDROSA | Repsol Honda Team | 188 |
4 | John HOPKINS | Rizla Suzuki MotoGP | 156 |
5 | Chris VERMEULEN | Rizla Suzuki MotoGP | 152 |
6 | Marco MELANDRI | Honda Gresini | 148 |
7↑ | Loris CAPIROSSI | Ducati Marlboro Team | 130 |
8↑ | Nicky HAYDEN | Repsol Honda Team | 112 |
9↓ | Colin EDWARDS | Fiat Yamaha Team | 108 |
10 | Alex BARROS | Pramac d'Antin | 91 |
11 | Toni ELIAS | Honda Gresini | 87 |
12↑ | Randy DE PUNIET | Kawasaki Racing Team | 78 |
13↓ | Alex HOFMANN | Pramac d'Antin | 65 |
14 | Carlos CHECA | Honda LCR | 54 |
15 | Anthony WEST | Kawasaki Racing Team | 54 |
16↑ | Sylvain GUINTOLI | Dunlop Yamaha Tech 3 | 43 |
17↓ | 中野 真矢 | Konica Minolta Honda | 42 |
18↓ | 玉田 誠 | Dunlop Yamaha Tech 3 | 37 |
19 | Kurtis ROBERTS | Team Roberts | 10 |
20 | Roger Lee HAYDEN | Kawasaki Racing Team | 6 |
21 | Michel FABRIZIO | Honda Gresini | 6 |
22 | Fonsi NIETO | Kawasaki Racing Team | 5 |
23 | Olivier JACQUE | Kawasaki Racing Team | 4 |
24 | Kenny ROBERTS JR | Team Roberts | 4 |
25 | 伊藤 真一 | Pramac d'Antin | 1 |
コンストラクターランキング
言うまでも無いが、ドカティ敵なしである
順位 | コンストラクター | ポイント |
1 | DUCATI | 324 |
2 | HONDA | 255 |
3 | YAMAHA | 251 |
4 | SUZUKI | 207 |
5 | KAWASAKI | 114 |
6 | KR212V | 14 |
ブリヂストンの勝利は、ブリヂストンの力不足が原因?
Moto Maxのたわごと@日本GP
日本グランプリの上位は、ブリヂストン車ばかりだ。
ミシュランの最高位はヘイデンの9位。それに加えリタイヤ3人の内、2人がミシュランタイヤだ。
レース開始前には、ブリヂストンがテストを繰り返しているツインリンクもてぎでウェットコンディションとなれば、ブリヂストン車が圧倒的に有利と感じていた。
ところがレース序盤で、ミシュランの方が機能していることが、明らかに分かる展開となった。カピロッシがレース後に語ったように、ハーフウェットの状態では、ミシュランの方がうまく機能していたのだ。
ところがこれが、レース結果には、全く逆の作用を持った。
今回のレースは順位変動が激しく、文章で把握しづらいかと思うので、変動をグラフにしてみた。
1位のカピロッシから6位のストーナーまでと、ロッシの順位変動はこのようになっている。
これを見ると、いち早くタイヤを変えたギュントーリ(黄色線)が一旦は順位を下げたものの、その後には急激に順位を上げた事が良く分かる。
カピロッシ(赤線)は順位低下を最低限に抑える、まさにパーフェクトなタイミングでタイヤ交換を行っている。
一方で、バトルに集中してしまったロッシとストーナーは、お互いに集中するあまり、その他の猛烈な追い上げを許してしまった。
ミシュラン車はレインタイヤで走れてしまったがために、ロッシのピットインのタイミングが遅れた。
ブリヂストン車はレインタイヤが機能しなかったために、カピロッシは早目にドライタイヤに交換した。
この差がレース結果を決めてしまったのだから、レースと言うのは全くもって、何が結果を決めてしまうのか分からないものだ。