Moto GP 2007年第7戦 カタルニアGP

レース後半、ストーナーとロッシが素晴らしいバトルを展開する。20歳になったばかりのストーナーは、王者ロッシと堂々と渡り合う圧巻の走りを見せた。

ストーナーの冷静さ、戦術、テクニックを備えた走りには、この若者には一体どれほどの才能があるのかと、驚きを隠せない。

上位3人のバトルのうち2人が、デビュー2年目というのも驚き。

上位10台の内の7台はブリヂストンなのに、3位までのうち2台はミシュランというのも印象深い。

見逃せないレースである。

目次

カタルニアGP レース前のTips

開 催 日 : 2007年6月10日
コンディション : ドライ
気   温 : 31℃
路 面 温 度 : 43℃

2006年のカタルニアGP

2006年のカタルニアGPは、スタートを3回行うという、大混乱で幕を開けた。

再スタートの原因となった多重クラッシュでは、ランキング首位のカピロッシと3位のメランドリが大ケガを負ってしまい、その後の年間ランキングの行方が大きく変わっていった。

1位 ロッシ、 2位 ヘイデン、 3位 ロバーツJr.

ロッシが最上級クラスの表彰台登壇数トップとなるか?

このレースでロッシが表彰台に立つと、ミック・ドゥーハンを抜いて最上級クラス(GP500+Moto GP)の最高登壇数96回を達成する。

ケニー・ロバーツJr.の引退レース

前戦に引き続き、ケニー・ロバーツJr.の弟、カーティス・ロバーツが参戦している。ケニー・ロバーツJr.はこのレースを最後にシートを弟に譲り、レース界を引退した。

前年の10月に開催された第16戦で3位に入賞した際には、「良いセッティングを見つけることが出来た。来年は優勝争いに絡んでいけるはずだ。」と自信を見せていたロバーツJr.だっただけに、下位に沈んだままでの引退は無念であったろう。

カタルニアサーキットの概要

カタルニアサーキットのレイアウトコース全長 : 4,727m

コース幅 : 12m

コーナー数 : 右 8 左 5

最長ストレート : 1,047m

決勝レース周回数 : 25周

総走行距離 : 118.175km

カタルニアGP 決勝のグリッド

ロッシが2位のドプニエより1.1秒も早いタイムでPPを取得している。

Row Grid Rider Team Time
1 1 Valentino ROSSI Fiat Yamaha Team 1'41.840
2 Randy DE PUNIET Kawasaki Racing Team 1'41.901
3 Dani PEDROSA Repsol Honda Team 1'42.002
2 4 Casey STONER Ducati Marlboro Team 1'42.117
5 John HOPKINS Rizla Suzuki MotoGP 1'42.233
6 Colin EDWARDS Fiat Yamaha Team 1'42.283
3 7 Nicky HAYDEN Repsol Honda Team 1'42.522
8 Toni ELIAS Honda Gresini 1'42.607
9 Marco MELANDRI Honda Gresini 1'42.623
4 10 Alex HOFMANN Pramac d'Antin 1'42.860
11 Chris VERMEULEN Rizla Suzuki MotoGP 1'42.967
12 中野 真矢 Konica Minolta Honda 1'43.334
5 13 Sylvain GUINTOLI Dunlop Yamaha Tech 3 1'43.557
14 Alex BARROS Pramac d'Antin 1'43.722
15 Carlos CHECA Honda LCR 1'43.729
6 16 玉田 誠 Dunlop Yamaha Tech 3 1'43.947
17 Loris CAPIROSSI Ducati Marlboro Team 1'43.948
18 Kenny ROBERTS JR Team Roberts 1'44.263
7 19 Kurtis ROBERTS Team Roberts 1'45.223

 

カタルニアGP レースの経過

ホールショットはペドロサ。ストーナーが得意のロケットスタートで2位につけ、5番グリッドのホプキンスもナイススタートで3位に、ロッシは4位に付ける。

2周目

早くも先頭4台が他を引き離し始める。ストーナーが直線でペドロサかわし、トップに。

ロッシがホプキンスに仕掛け、パスに成功するが、ホプキンスが直ぐに挽回する。
このバトルの間に、2位ペドロサとの差が0.6秒に開く。

3周目

ロッシがホプキンスをパスし3位に上がるが、先頭2台との差が1秒まで開く。

4周目

ペドロサがストーナーのスリップストリームからのパスを狙うが、直線距離が足りず抜ききれない。

5周目

トニー・エリアスが4位のホプキンスを抜くが、ラインを外し抜き返される。

6周目

ペドロサに対し、「ロッシ+0秒」とサインが出される(実際には0.6秒)

4位のホプキンスと5位のエリアス差が開き始める。

ペドロサはストーナーのインを執拗に狙うが、ストーナーがラインを封じ、入ることが出来ない。

7周目

ペドロサは毎周のようにストーナーのスリップ・ストリームを使い、第1コーナーでインに入ろうとするが、ドカティの加速とケーシーのブレーキングの深さに阻まれ、インに入ることが出来ない。

この時までのストーナーの最高速は予選時より15km遅く、後半に向けて、レースをコントロールし、余力を残していることが窺える。

ストーナー、ペドロサ、ロッシ、ホプキンスの先頭4台が纏まり始めている。

8周目

ロッシがペドロサに迫る。

9周目

ストーナーがペドロサとの差をつけ始め、ペドロサはストーナーのスリップ・ストリームが使える距離に届かなくなってきている。

4位のジョン・ホプキンスがファステストラップを記録する。

10周目

ロッシは3位を守っているように見える走り。ペドロサとストーナーの様子を窺っているのか?

11周目

第一コーナーでロッシがペドロサをパスし、2位に上がる。

12周目

ロッシがストーナーに近付き、ペドロサとロッシの差は開いてきている。

ロッシがストーナーをインからパスするが、直ぐに抜き返される。ロッシは直ぐに抜き返されることが分かっているようなライン取りをしていて、ストーナーへのプレッシャーをかけているのが明白。

13周目

4位までが等間隔で走行している。

コースの中盤セクションまではロッシが早く、ストーナーに近付くのだが、後半ではストーナーが速く、差が元に戻る。ストーナーは常にロッシからのプレッシャーを受けているにもかかわらず、全く意に介せずという走りをしている。地元の実況も「ストーナーはプレッシャーという言葉を知らないのではないか?」と話しているが、全くその東リと感じる走り。
この男、只者じゃない。

14周目

ホームストレート(1,047m)でもヤマハがドカティに負けない加速を見せている。第1戦カタールGPでドカティが見せた驚きの加速は、既にドカティの強みではないのか?それともストーナーが抑えているのか?

コース前半では相変わらずロッシがストーナーに迫るが、ストーナーは後ろにも目が付いているような走りでラインをことごとく塞ぎ、得意な後半に持ち込み、ロッシを再び引き離していく。

15周目

先頭4台が各々1秒差で走行している。

ホプキンスがかなり無理をして走行しているように見える。
またもや表彰台に届かないのか?
3位に入るというのは、如何に大きな壁なのだろう。

ロッシは相変わらずコース前半でストーナーとの差を詰めるが、以前ほど近付けなくなってきている。
ロッシは攻めずに様子をうかがっているのだろうか?それとも攻められないのだろうか?

ストーナーは全くミスをせず、王者ロッシを従えて、恐ろしいほど冷静に周回を重ねている。

17周目

ペドロサがペースアップし、ロッシに追いつく。

ホプキンスはペドロサから1秒遅れで単独4位を走行している。

18周目

ロッシがペースを上げ、得意の前半でストーナーをパスする。ロッシは後半セクションでラインを閉め、ストーナーをブロックし、トップでホームストレートまで戻ってくる。

ホームストレートでストーナーがロッシに並んでくるが、ロッシはレイトブレーキングで首位を守る。この間にペドロサも迫り、完全に3台でのトップ争いになる。

ロッシとストーナーが並んだ状態でコーナーを通過していくシーンが何度か見られるが、ついにストーナーがロッシをパスし、トップに返り咲く。

ロッシは再びストーナーをパスするが、イン側が開いてしまう。
ストーナーはそれを見逃さず、ロッシをパスする。
ロッシはペドロサにも抜かれかけるが、素早くラインをブロックし、2位をキープする。
とんでもない技術戦。
ロッシのこの動きでストーナーがロッシとの差を広げ、ロッシはペドロサにぴったりと付かれた形になる。

ロッシのバイクが各コーナーで膨らんでいて、タイヤが消耗しているのが窺える。

20周目

ホームストレートでペドロサがロッシのスリップストリームから飛び出すが、ロッシはレイトブレーキングでこれを封じると同時に、ストーナーとの差を一気に挽回する。
王者の技術力ここに極まれりといった走り。

ストーナーのバイクもコーナーでアウトにスライドしているのが窺える。
ロッシはこれを見逃さず、スライドして空いたラインをすり抜けてトップに戻る。

21周目

ホームストレートでストーナーがロッシをパスし首位に戻る。
やっぱりストーナーは余力を残していたのだろうか?

22周目

ロッシが1コーナーでインからストーナーをパスしてトップに。
ロッシがペースを上げている? 或いはストーナーがロッシを見ているのだろうか?

23周目

ホームストレートではロッシ、ストーナー、ペドロサともギリギリまでブレーキを我慢しているのが分かる。

ストーナーがロッシをパスしかけるが、ロッシが僅かの差で首位を保つ。
スキが無いのはロッシも同じ、ストーナーはどこで攻めるのだろう?

24周目

ストーナーが、これまでの走りから1段上がったような走りで第一コーナーに飛び込み、ロッシを悠々とパスする。
ロッシ、どう攻める?

バックストレート後のコーナーでストーナーは後輪を激しくスライドさせ、ロッシはオフステップのブレーキングで攻める。どちらもこれまでには見せなかった走りで、ギリギリの走行をしているのが分かる。

ロッシはホームストレートでストーナーに迫るべく、最終コーナーを速度を上げて通過し、立ち上がりでストーナーに迫るが、スリップ・ストリームに入るほどには近付けない。

最終周

最終周に入った直後のホーム・ストレートで、ペドロサがロッシに仕掛けるが、パスできない。

ロッシは得意の前半セクションで、ストーナーを攻め立てるが、ストーナーはロッシのラインをことごとく塞ぐ走りをみせ、ロッシに入るスキを与えない。

ペドロサがロッシのパスを試みるが、コーナーでアウトにはらんでしまう。タイヤが相当に摩耗している。

ロッシは最終コーナーに向けてストーナーとの差を縮めようとするが、追いつくことが出来ず、そのままフィニッシュとなる。

ストーナーとロッシの差は0.069秒。
ロッシとペドロサの差は0.321秒。

カタルニアGPの結果

上位はブリヂストンのオンパレードだが、その中でロッシとペドロサだけが気を吐いている。ベテランであるロッシは分からないでもないが、僅か2年目のペドロサの努力は見上げたものだ。

順位 Rider トップとのタイム差 タイヤメーカー
1 Casey STONER ブリヂストン
2 Valentino ROSSI 0.069 ミシュラン
3 Dani PEDROSA 0.390 ミシュラン
4 John HOPKINS 7.814 ブリヂストン
5 Randy DE PUNIET 17.853 ブリヂストン
6 Loris CAPIROSSI 19.409 ブリヂストン
7 Chris VERMEULEN 19.495 ブリヂストン
8 Alex BARROS 24.862 ブリヂストン
9 Marco MELANDRI 24.963 ブリヂストン
10 Colin EDWARDS 35.348 ミシュラン
11 Nicky HAYDEN 36.301 ミシュラン
12 玉田 誠 38.720 ダンロップ
13 Alex HOFMANN 40.934 ブリヂストン
14 Sylvain GUINTOLI 44.399 ブリヂストン
15 中野 真矢 54.103 ミシュラン
16 Kenny ROBERTS JR 59.655 ミシュラン
17 Carlos CHECA 1'02.315 ミシュラン
18 Kurtis ROBERTS 1'03.322 ミシュラン
R Toni ELIAS

 

カタルニアGP終了後の年間ランキング

ストーナーがロッシを5ポイント引き離している。

ライダーランキング

順位 ライダー チーム ポイント
1 STONER Casey Ducati Marlboro Team 140
2 ROSSI Valentino Fiat Yamaha Team 126
3 PEDROSA Dani Repsol Honda Team 98
4 MELANDRI Marco Honda Gresini 75
5 VERMEULEN Chris Rizla Suzuki MotoGP 72
6 HOPKINS John Rizla Suzuki MotoGP 72
7 CAPIROSSI Loris Ducati Marlboro Team 57
8 BARROS Alex Pramac d'Antin 51
9 ELIAS Toni Honda Gresini 45
10 EDWARDS Colin Fiat Yamaha Team 45
11 HAYDEN Nicky Repsol Honda Team 41
12 HOFMANN Alex Pramac d'Antin 38
13 DE PUNIET Randy Kawasaki Racing Team 30
14 CHECA Carlos Honda LCR 20
15 中野 真矢 Konica Minolta Honda 19
16 玉田 誠 Dunlop Yamaha Tech 3 16
17 GUINTOLI Sylvain Dunlop Yamaha Tech 3 16
18 NIETO Fonsi Kawasaki Racing Team 5
19 JACQUE Olivier Kawasaki Racing Team 4
20 ROBERTS JR Kenny Team Roberts 4

 

コンストラクターランキング

ヤマハがホンダを抜き、2位に浮上した。

順位 コンストラクター ポイント
1 DUCATI 143
2 YAMAHA 126
3 HONDA 125
4 SUZUKI 95
5 KAWASAKI 39
6 KR212V 4

 

MotoMaxのたわごと@カタルニアGP

2007年シーズンに入り7戦目で、ストーナーは既に4勝目である。しかも今回はロッシと堂々と渡り合い、ロッシのラインをことごとく塞いでの文句なしの勝利である。

第1戦目のカタールでは、ドカティの加速性能や、ブリヂストンタイヤの完成度の高さに助けられた側面が有ったと思うのだが、前戦ではミシュランが1位2位を獲得しているし、今戦ではヤマハの加速性能が増してきて、カタールの時ほどの差は無かった。

その状況で、ロッシを従えて、全くミスなく、淡々と周回を重ねるストーナーの走りは、見ていてあんぐりと口が開いてしまうほどだった。

ロッシも参ったろうと思う。ジベルナウにはあれほど通じた戦術が、若干二十歳のデビュー2年目の若者に通じないのだから。

しかも背後には、これも二十歳で2年目のペドロサがぴったりと付いてくる。

この状況を、ロッシはどう感じていたのだろう?

 

2005年ころのTV解説では、ロッシがF1に移籍する可能性が何度となく語られているし、ロッシもそれに似たようなことを口にしている。

「2輪ではやるべきことはやったし、勝てちゃうし。」というのが、ロッシのホンネだったのかもしれない。

 

ロッシのその想いを断ち切らせたのは、「まだやるべきことはある」って思わせた、この2人なんじゃないだろうか?

確かに2006年はニッキーヘイデンが優勝し、ロッシは2位となったけど、2007年のヘイデンは見るも無残な状況だから、もしストーナーとペドロサがいなかったら、ロッシは余裕で年間優勝を獲得して、意気揚々と4輪に移ったなんてストーリーも出来ただろう。

勝てちゃうロッシには、ストーナーやペドロサのような、簡単には勝てない相手、互角にバトルが出来る相手が必要だったのかも?

 

ストーナーに敗れたカタルニアGPの後の、ロッシの満足そうな振る舞いを見ていると、そう感じてしまう。

 

 

 

 

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