Moto GP 2007年第1戦 カタールGP

2007年から、Moto GP参加車両の排気量が最大990ccから800ccに引き下げられている。その為、各社は前年までとは全く違うエンジンを新たに開発する必要があった。

規定変更後の第1戦であるカタールGPは、各社のニューマシーンお披露目の場として、例年以上の期待を持って迎えられた。

その中で、驚きのポテンシャルを発揮したのがドカティだった。ホンダからドカティに移籍したケーシー・ストーナーが見せた、直線での圧倒的な速さは、見る者全ての度肝を抜いた。

目次

カタールGP レース前のTips

開催日 : 2007年3月10日
コンディション : ドライ
気温 : 29℃
路面温度 : 45℃

2006年のカタールGP

2006年のカタールGPでは、ケーシーストーナーがデビュー2戦目とは思えない走りで、ポールポジションを獲得。本戦でも新人離れした走りで、中盤までレースを支配した。結果は5位だったが、才能を示すに十分の走りを見せつけた。

1位 ロッシ、2位 ヘイデン、3位 カピロッシ

排気量、ガソリン量、タイヤ本数の変更

マシンの最大排気量が990ccから、800ccに変更された。

1レースでの使用可能ガソリン量も22Lから21Lに減ったことから、各社は全く新しいマシンの開発が必要となった。

フリープラクティス~予選~本戦までの3日間に使用できるタイヤの本数が、フロントタイヤ14本、リアタイヤ17本に制限された。これにより2006年までは出来ていた「フリープラクティスの結果を見て、決勝用のタイヤを作り、決勝朝までに持ってくる」という事が出来なくなった。

木曜の結果を見て、日曜日用のタイヤを新しく作って持ってくるって、正気か、、、?
Moto GPはマシンやライダーだけでなく、メーカーにとっても過酷なのだと良く分かる。

ケーシー・ストーナーが移籍

参戦2戦目のケーシー・ストーナーが、ホンダのサテライトであるHonda LCRから、ドカティのファクトリーであるDucati Marlboro Teamに移籍している。普通の新人ライダーなら、1年目でマシンに慣れ、2年目で実績を狙うものだが、参戦後わずか3戦でPPと2位という実績を出したストーナーは別格である。

セテ・ジベルナウが引退

セテ・ジベルナウが引退しGPを去っている。

ロッシの呪い(ロッシはそのような事は否定するだろうが)の通り、一度も勝利することなく、GPを去っている。ロッシと互角に戦えるライダーだったのだが、勝負はサーキットの外で付いてしまった感がある。

「GPチャンピオンになるには、ある種の狡猾さが必要」と、ロッシが後に語っているが、ジベルナウにはその狡猾さが無かったように感じる。

中野真矢と玉田誠が移籍

中野がKawasaki Racing TeamからKonica Minolta Hondaに移籍し、玉田はKonica Minolta HondaからDunlop Yamaha Tech 3に移った。このころからMotoGPにおける日本ライダーの存在感は急速に失われていく。

アレックス・バロスとオリビエ・ジャックが復帰

バロスがPramac d'Antin(ドカティ)から、ジャックがKawasaki Racing TeamからMoto GPに復帰している。バロスは2005年までCamel Hondaからフル参戦、ジャックは2003年までGauloises Yamaha Teamからフル参戦していた。

イルモアが正式に参戦

2006年の最後2戦をワイルドカード参戦していたイルモアが、正式に2台のマシンを走らせることになった。ライダーは06年のギャリー・マッコイではなく、アンドリュー・ピットとジェレミー・マクウィリアムスである。尚、イルモアは、大口のスポンサーが獲得できず資金難となり、このレースを最後にMoto GPには参加していない。

サーキットの概要

コース全長 : 5,380mカタールサーキットのレイアウト

コース幅 : 12m

コーナー数 : 右10 左6

最長ストレート : 1,068m

決勝レース周回数 : 22周

総走行距離 : 118.36km

直線の距離が1,068mもあるため、加速性能に優れたマシンにとって有利なサーキットである。

海沿いの砂漠に位置するサーキットであることから、海風で巻き上げられた砂が路面を汚してしまうという、ライダー泣かせのサーキットでもある。これに加えて、似た形状のカーブが多く、コース周辺に目立った目印がなく、ブレーキングポイントが見つけにくいことも、サーキットの攻略を難しくしている。

2005年は第14戦、2006年は第2戦が開催されたサーキットだが、よりによって全く新しい仕様のマシンを走らせる2007年が、このサーキットから始まることになった。

カタールGP 決勝のグリッド

 

Row Grid Rider Team Time
1 1 Valentino ROSSI Fiat Yamaha Team 1'55.002
2 Casey STONER Ducati Marlboro Team 1'55.007
3 Colin EDWARDS Fiat Yamaha Team 1'55.233
2 4 Toni ELIAS Honda Gresini 1'55.358
5 Dani PEDROSA Repsol Honda Team 1'55.361
6 John HOPKINS Rizla Suzuki MotoGP 1'55.833
3 7 Loris CAPIROSSI Ducati Marlboro Team 1'55.851
8 Randy DE PUNIET Kawasaki Racing Team 1'55.933
9 Nicky HAYDEN Repsol Honda Team 1'56.041
4 10 Marco MELANDRI Honda Gresini 1'56.222
11 中野 真矢 Konica Minolta Honda 1'56.306
12 Carlos CHECA Honda LCR 1'56.609
5 13 Chris VERMEULEN Rizla Suzuki MotoGP 1'56.639
14 Olivier JACQUE Kawasaki Racing Team 1'56.754
15 Alex BARROS Pramac d'Antin 1'56.814
6 16 Sylvain GUINTOLI Dunlop Yamaha Tech 3 1'57.257
17 Alex HOFMANN Pramac d'Antin 1'57.274
18 Kenny ROBERTS JR Team Roberts 1'57.495
7 19 玉田 誠 Dunlop Yamaha Tech 3 1'58.024
20 Jeremy McWILLIAMS Ilmor GP 1'59.606
21 Andrew PITT Ilmor GP 1'59.725

 

カタールGP レースの経過

ホールショットはバレンティーノ・ロッシ。ケーシー・ストーナーとトニー・エリアスがこれに続く

2周目

2周目に入る直前にストーナーが駆るドカティが、目を疑うようなスピードで、ロッシをパスしトップに立つ。ダニ・ペドロサが3位に上がる。この時点でニッキー・ヘイデンは9位を走っている。

3周目

3位のペドロサが2位のロッシに迫ってくる。

4周目

ロッシがストーナーをパスしトップに立つが、直ぐに抜き返される。

5周目

直線で、ペドロサがロッシに並ぶが、パスは出来ない。ヤマハ車のパワー不足が露呈する展開。ヤマハ車はコーナーでは早いものの、直線ではドカティに全く歯が立たなく、ホンダにも劣っている。そのため、カーブが多いセクションでロッシがストーナーをパスするも、最終コーナー後の直線で、ストーナーに抜き返されてしまう。

6周目

ロッシがストーナーをパスするが、直線でストーナーに抜き返される。

7周目

ロッシがペドロサにパスされ、3位に落ちる。5位を走行していたロリス・カピロッシが転倒リタイヤ。

9周目

ペドロサが直線でロッシを抜くが、直後のブレーキングでかわされる。

10周目

ヘイデンがクリス・バーミューレンにパスされ、9位に落ちる。この時点でヘイデンはトップから10秒以上差を付けられている。

11周目

3位のペドロサが最終コーナーではらんでしまい、2位のロッシとの差が開く。さらにホプキンスにもパスされてしまう。

12周目

ペドロサがホプキンスを抜き返し、3位に戻る。

13周目

ストーナーがファステストの走り。ストーナーは周回を重ねるごとに早くなる。

14周目

トップのストーナーと、2位ロッシの差は0.4秒。

15周目

ロッシはストーナーに0.4秒ほど遅れて2位を走っている。カーブが続くサーキット中盤では、ストーナーに追いつけるものの、後半セクションと直線で引き離されるという展開が続く。ペドロサとホプキンスは先頭集団から2秒遅れの位置で、3位争いを続けている。

16周目

ヘイデンがトニー・エリアスをパスし、8位に上がる。ロッシがストーナーに迫る。

17周目

ストーナーがファステストの走り。

19周目

ヘイデンがエリアスにパスされ、8位に落ちる。ロッシがストーナーをパスしトップに立つが、最終コーナー後の直線で抜き返される。

20周目

ロッシが何度となくストーナーに仕掛けるが、全てブロックされる。

21周目

ストーナーがロッシとの差を0.6秒まで開く。ロッシは必死にストーナーを追うが、レース中盤まではアドバンテージがあったコースの中盤セクションでも差を詰められない。

最終周

ストーナーは最終ラップでもファステストを記録する。その結果、ロッシとの差を2.8秒まで広げてフィニッシュする。

カタールGPの結果

 

順位 Rider トップとのタイム差 タイヤメーカー
1 Casey STONER ブリヂストン
2 Valentino ROSSI 2.838 ミシュラン
3 Dani PEDROSA 8.530 ミシュラン
4 John HOPKINS 9.071 ブリヂストン
5 Marco MELANDRI 17.433 ブリヂストン
6 Colin EDWARDS 18.647 ミシュラン
7 Chris VERMEULEN 22.916 ブリヂストン
8 Nicky HAYDEN 23.057 ミシュラン
9 Alex BARROS 25.961 ブリヂストン
10 中野 真矢 28.456 ミシュラン
11 Alex HOFMANN 35.029 ブリヂストン
12 Olivier JACQUE 42.948 ブリヂストン
13 Kenny ROBERTS JR 42.977 ミシュラン
14 Toni ELIAS 42.989 ブリヂストン
15 Sylvain GUINTOLI 51.639 ダンロップ
16 玉田 誠 57.853 ダンロップ
R Andrew PITT、Carlos CHECA、Randy DE PUNIET、Loris CAPIROSSI、Jeremy McWILLIAMS

ホプキンスは、予選時の転倒で右手を骨折しているにもかかわらず、4位に入賞した。

表彰式後の記者会見で、ストーナーが「今回のレースは余裕で走れた。一度もプッシュしなかった。」と発言する。これを聞いた途端、ロッシの笑顔が消えた。

 

 

 

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